「見栄っ張り」「品性に欠ける」 ネットで“残クレアルファード”を叩く人が、壮大なブーメランを食らう根本理由

キーワード :
,
ネット上で拡散する「残クレアルファード批判」は根拠薄弱な感情論が多い。購入層の70%以上が合理的なローン戦略を活用し、実際には資産形成にも寄与している事実に注目すべきである。

「残クレアルファード批判」という虚構

「質」のイメージ(画像:写真AC)
「質」のイメージ(画像:写真AC)

 ひとつずつ説明していこう。

 まず、「アルファードやヴェルファイアに乗っている人は質が良くない」という批判を検証する。「質」とは

・学歴
・所得
・職業
・居住地
・犯罪歴

など、具体的な社会統計に紐づく場合に意味を持つ言葉である。しかし、警察庁の交通事故統計や自動車保有者の属性データには、アルファード保有者が質が悪いという因果関係を示す数字は存在しない。実際には、購入層の多くは相応の収入があり、前述のとおり、法人需要も高い。中古車市場では輸出需要が価格を支え、安定した経済基盤を持つユーザーが多いことを示す。したがって、「質が悪い」との決めつけはデータに基づかない印象操作に過ぎない。

 次に、「運転者の多くが品性に欠けるから馬鹿にされる」という主張も論理的に自壊している。「品性がないから馬鹿にされる」という議論は、循環論法に陥っており、結局

「馬鹿にされるのは馬鹿にされるからだ」

といい換えられるに過ぎない。また、運転マナーが悪いという指摘も、特定車種だけに当てはめるのは誤りである。警察庁の違反件数は車種別に統計化されていないため、アルファードだけを悪質と断定する根拠は存在しない。仮にマナーの問題がある場合も、それは車種ではなく運転者個人の問題である。車両の価値や金融商品を論じる場で、「品性」という曖昧な概念を持ち込むことは、議論の本質をすり替える行為に他ならない。

 さらに、「ただ乗れればいい、見栄を張りたい人が多い」という批判もステレオタイプに過ぎない。見栄消費は

「すべての耐久消費財」

に当てはめられる。高級腕時計やブランドバッグも社会的シグナルの役割を持つ。自動車は耐用年数が長く、移動手段であると同時に資産保全や売却益の可能性を持つため、単なる見栄消費とは区別されるべきである。アルファードの購入層には子育て世代や法人役員も多く、実用性と快適性を重視した合理的な選択である場合が多い。法人需要は新車販売の約3割を占め、送迎や接待などの業務利用も目立つ。購入は見栄だけでなく、利用価値と資産価値を両立させた判断だといえる。

 最後に、「残クレ購入者は深く考えていない」という指摘は事実と逆である。残価設定ローンを理解し、手元資金を温存しながらリセール価値の高い車にアクセスする行為は、金融戦略のひとつである。

 トヨタファイナンスの調査では、自動車ローン利用者のうち、残クレを利用する割合が70%を超えている。また、高級車市場ではレクサスやアルファードなど、リセールバリューの高い車種で残クレ利用率が50%以上に達しているという報告もある。これらの情報から、残クレの利用は高額車種や高級車市場で特に多く、全体の新車販売においても一定の割合を占めると推測できる。

 消費者は支払総額だけでなく、キャッシュフローや資産価値を考慮しており、深く考えていない層はむしろ軽自動車や低価格車を現金一括で購入する傾向が強い。したがって、「深く考えていない」という批判は実態を誤解している。

全てのコメントを見る