八王子自動運転バス事故、軽傷3人でなぜ「大騒ぎ」? 日本のゼロリスク志向が招く技術停滞の危機
日本と海外の差
筆者(西山敏樹、都市工学者)は大学教員として、国内外の公共交通事業の研究者や実務家と意見交換する機会が多い。電気自動車や自動運転システムなど、公共交通の支援技術の研究では、実証実験が不可欠である。技術を社会に導入する際の姿勢も各国で異なる。
中国では電動バスの研究や事業化が進むなか、日本の目から見ても完成度は
「8~9割程度」
で市場投入される印象だ。実運用で調整・改善を重ねる姿勢が一般的である。同国南東に位置する深センで筆者が講演した際も、市内には故障中の電動バスが複数停まっていた。現地の専門家に「あれでよいのか」と尋ねると、
「まずはやりながら進む」
と答えられた。欧米でも法的リスクを考慮しつつ、テストを積極的に進めて前進させる姿勢がある。
一方、日本はどうか。軽傷事故1件で全国の他都市でも前進が止まる傾向がある。滋賀県大津市では自動運転バスの実証運行を何度も試みたが、事故が起きるたびに要因の検証が優先され、一歩進んで一歩以上後退する状況が続く。日本の場合、
「石橋を叩きすぎる傾向」
があるように見える。あくまで筆者個人の印象だが、このままでよいのかと考えさせられる。
海外のリスク許容度と産業競争力、技術成熟速度への影響も重要な論点である。中国のビジネス戦略が正しいかは別として、深センでは2017年末時点で市内の路線バス約1万6000台を100%電気自動車(EV)化した。2018年末には市内のタクシー約2万1500台も電動化し、ほぼ全車がEVになった。中国科学院など国の研究機関も電動化技術の研究を進め、民間に成果を還元している。
中国政府は2019年12月、エコカー普及戦略を発表した。2035年までに公共分野の車両を全面的に電動化すると明記されている。日本との差はどこにあるのか。
・国家体制の違い
・研究・試作・実用化のスピード感
・生活者の価値観の差
などが要因だろう。しかし、故障や小事故をどう捉えるかという姿勢も大きな差のひとつに思える。