なぜ中国は「EVバッテリー」を大量廃棄するのか? 非正規業者「18万社」の現実とは

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中国でEV普及に伴う廃バッテリーが急増し、2025年には100万個に達する見通しだ。制度整備が進む一方、非正規ルートのまん延が環境負荷を拡大し、リサイクル市場の成長と課題が交錯している。

廃電池急増が迫る資源循環の試練

EVに搭載されるタイプのバッテリーセル(画像:PowerFord)
EVに搭載されるタイプのバッテリーセル(画像:PowerFord)

 中国で廃棄される車載電池は年々増え、2025年には100万個、重量にして80万tに達すると見込まれている。電池の回収と再利用をめぐる市場は急速に拡大し、2030年までに1000億~2000億元、つまり日本円で

「約2~4兆円」

の規模になるとの予測もある。自動車情報サイト「蓋世汽車」の2024年リポートによれば、廃バッテリーの回収量は2023年に62万3000t、2025年に120万t、2030年には600万tへ膨らむ見通しだ。

 中国政府はこうした事態を早くから想定し、2015年以降、次々と制度を打ち出してきた。2015年にはEV用廃バッテリーの利用に関する業界基準を定め、翌2016年にはメーカーの責任を広げる制度を導入。さらに2017年には回収と利用を管理する暫定措置を施行し、2018年には電池の流通経路を追跡できるトレーサビリティ規定を整備した。

 近年では、2021年に公表された「循環経済発展に関する第14次5ヵ年計画 」で、電池リサイクルが重点テーマに位置づけられた。この計画では、自動車メーカーとリサイクル企業の協力を促し、電池のライフサイクル全体を管理できるシステムの構築を掲げている。さらに2022年には政府8部門が連携し、

・サプライチェーン全体の協働体制の確立
・三大地域での実証プロジェクトの推進
・性能測定や金属回収に関する国家基準の策定

を含む施策を発表した。

 制度の枠組みだけを見れば、中国は資源を循環させる責任ある仕組みを整えつつあるように見える。しかし理想と現実の間には、いまだ大きな隔たりが残されている。

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