「制度に縛られる課長」「育成リソース不足の部長」 上司を“無能”呼ばわりしても全く意味がない理由【連載】上司ガチャという虚構(1)
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昇進や育成機会の不足を「無能な上司」と片付ける前に、構造的な制度の課題を見極める必要がある。正社員の61%が計画的OJTを受け、非正社員は27%。自己投資で成長する働き手の戦略に学ぶ、自律キャリアの新潮流。
無能印象を生む構造的背景

厚生労働省の2023年度「能力開発基本調査」によれば、正社員に計画的なOJTを実施した事業所は61.1%である。非正社員では27.1%にとどまる。OFF-JT(研修)に支出する費用や制度も限定的で、教育訓練休暇制度を導入している企業は7%前後に過ぎない。
このような制度的制約が、上司の育成能力を十分に高められない背景となっている。能力開発や育成に問題があると認識する事業所は79.9%に達し、多くの企業で育成体制の課題が顕在化している。
こうした環境では、成果を上げた人が育成やマネジメントを経験せずに管理職に昇進することがある。その結果、
・成果を出す力
・育てる力
のギャップが生まれ、組織の機能不全が起きやすくなる。
心理面では、部下や従業員がキャリア期待と現実の乖離を経験すると、「上司に責任がある」と考えやすい。
「自分はもっと評価されるべきだ」
と感じ、環境や上司のせいにすることで自己防衛する傾向がある。この責任転嫁構造は一時的に心の安定につながるが、冷静な判断を阻む可能性がある。
理想的には上司は部下を成長へ導く存在と期待される。しかし、現実の環境ではその役割を十分に果たせない場合が多い。このギャップが「無能」という印象を生む土壌になっている。