なぜ地域交通ICカードの「10%上乗せ」は消えるのか? 鹿児島「ラピカ」廃止で露呈した地方交通の構造破綻

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「1万円チャージで1万1000円分」──地方交通を支えたICカードの“10%上乗せ”が今、制度破綻の危機にある。鹿児島では年間6000万円超の事業者負担が限界に達し、ついに廃止決定。全国で揺らぐ“回数券の遺産”の行方に注目が集まる。

地域ICカードの新常識

桜島(画像:写真AC)
桜島(画像:写真AC)

 だが、これを前向きに捉え直せば、サービスの在り方の転換点と見ることもできる。

 磁気式回数券がICカードへ進化しても、サービス内容が旧来のままというのは不自然だ。現代のキャッシュレス社会に適した還元手法は、実際に使った金額に応じたポイント還元である。

 例えば、1万円をチャージして残高に10%が加算される方式よりも、PayPayや楽天ペイのように1万円分使えば5%分がポイントで返ってくる仕組みのほうが合理的だ。交通系ICカードにとっても、こうした利用実績ベースの仕組みのほうが無駄がなく、制度設計上も扱いやすい。

 利用額に応じてポイントを還元する方式なら、個々の利用状況に応じた公平で効率的なサービスが可能になる。結果として、事業者や自治体の財政負担も軽減されるはずだ。

 つまり、地域交通系ICカードは今、制度の構造転換という重大な局面に直面している。

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