なぜ現代のクルマは“品格”を捨てたのか──「ロボット顔」が暴く教養なき富裕層と、“12歳化”社会の現実とは
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消費記号化が招く威圧美学

山口氏は、1980年代ごろまでの自動車デザインについて言及。ロールスロイス、フェラーリ、ランボルギーニなどの高級車を例に挙げ、「やっぱり今見てもですね、非常にその文化的な価値を持った美しい自動車だと思うんですね」と評価している。さらに、かつての高級車が貴族階級に支えられていたとしたうえで、
「富裕層の人たちっていうものがそういうものを買って、貴族の人たちですね、いたわけですけれども、今は貴族っていうものに頼っているとやっぱりビジネスは成立しないわけで、わかりやすくいうと“新興成金”っていうものを相手にしないとビジネスはデカくならないわけですね」
と述べた。従来のように、教養や審美眼を備えた富裕層ではなく、直感的に「わかりやすいかっこよさ」を求める層に訴求せざるを得なくなったというわけだ。
「結局この“新興成金”の人たちっていうのはところが子供のときから素晴らしい美術品とか調度品に囲まれて暮らしてたわけではないので、やっぱり何が良くて何が悪いのかっていうのがよくわからない。結局そういう人たちを相手にしないといけないので非常にわかりやすい、あえていうならばガンダムみたいな車が作られて、それがよく売れるわけです」
「ガンダムっていうのはまさに子供が見るもので、子供がちょうどかっこいいと思うようなデザインになっているわけですけれども、それがまさに自動車のデザインにも広がって、先般、マツダのデザインのトップをやられている 前田育男さんと話してたんですけども、世界の自動車が『総ガンダム化』しているっていうことをいっていて、言い得て妙だなと思ったわけです」
この指摘を敷衍すれば、成熟を欠いた“12歳の子供”のような富裕層が、文化的価値よりも視覚的インパクトを優先して自動車を選んでいることになる。
では、実際に「ガンダム的」な自動車は存在するのか。現代のEVや高級車に見られるデザインには、いくつかの共通項がある。
・威圧的
・線が多い
・情報過多
・パワー表現の過剰
といった特徴だ。例えば、現代自動車のEV「アイオニック5」はロボット風のデザインと評される。直線的なLEDヘッドライトや幾何学的なホイールが、近未来的な印象を与える。まさに“ロボットを想起させる”デザインといえる。また、レクサスの「スピンドルグリル」や、BMWの「ビーバーフェイス」と呼ばれるフロントマスクも、無機質で攻撃的な造形がロボット的な印象を強めている。
こうしたデザイン傾向は、自動車が力強さや存在感を誇示する方向に向かっていることの表れでもある。「ガンダム的」な外観は、スピードやパワーといった“記号的価値”を明確に伝えるための手段となっている。自動車を選ぶ基準が、文化的教養ではなくわかりやすい記号へと変化している現実が、そこにはある。
「一部の例外を除いて、ランボルギーニのカウンタックとかにちょっといまいち僕はピンとこないですけども、例えばフェラーリの250ルマンとか、275GTB4Dayとなとか、あるいはベントレーの戦前の車種、白洲次郎なんかが乗ってたのは本当に文化遺産になるんだろうなというふうに、実際もうなってるわけですけどもと思います」