トヨタは「新車依存」を捨てた? 既販1.5億台から収益2兆円の「バリューチェーン戦略」、自動車産業の何が変わるのか
トヨタは約1億5000万台の既販車ユーザーを軸に、年間1500億円以上の収益を生むバリューチェーン戦略を加速中だ。新車販売依存から脱却し、ソフトウェア・サービス拡充で2兆円超の収益基盤を構築。車両の長期保有や環境対応といった課題も抱えるなか、自動車産業の100年に一度の変革期に挑む姿勢が鮮明となっている。
「心のつながり」を軸に据えた成長戦略

日本自動車会議所の2025年度定期総会が、6月10日に開催された。新会長に就任した豊田章男氏は、「クルマをニッポンの文化に!」をスローガンとして掲げた。就任スピーチでは、「「日本の自慢はなんといってもクルマです」と答えるようにしていきたい」と語ったうえで、自動車会議所は人々の心を動かす団体であるとの考えを示した。
この発言は、トヨタが進めるバリューチェーン戦略とも通底する。人とクルマの共生のあり方を再定義する試みであり、単なる製品ではない価値を提示しようとしている。
クルマを長く使い続けられる環境を整えるには、オーナーとの関係性の強化が欠かせない。これは、クルマを所有や消費の対象から解放し、記憶や誇り、時間、体験を共有する存在へと昇華させるプロセスでもある。
GRヘリテージパーツ事業はその象徴だ。旧車の文化的価値を高めつつ、収益化も図る好例となっている。自動車メーカーがユーザーとの「心のつながり」を深めることで、ブランド価値を高め、持続可能な収益基盤を築く。この発想こそ、成熟産業が次の成長ステージに進むための起点となる。