トヨタは「新車依存」を捨てた? 既販1.5億台から収益2兆円の「バリューチェーン戦略」、自動車産業の何が変わるのか
旧車熱で稼ぐ部品供給網

トヨタが新たに掲げるバリューチェーン収益は、
・メンテナンスサービスの拡充
・コネクティッド技術の活用
・中古車・用品事業の拡大
の三本柱で構成されている。グローバルで約1億5000万台に及ぶ既販車ユーザーとの関係を深め、継続的な収益源として位置づけている。
宮崎副社長によると、バリューチェーン収益は年間で1500億円以上押し上げる効果を持ち、2025年度には2兆円台に達した。トヨタ自動車の2025年3月期決算では、自動車事業の営業収益が約43兆円、金融事業が約4.4兆円であり、バリューチェーン収益は金融事業の半数近くに迫る規模となっている。
この三本柱のなかで最も注目されるのは中古車・用品事業だ。トヨタは旧車人気の高まりを受け、2020年1月に「GRヘリテージパーツプロジェクト」を立ち上げた。A70/A80スープラの補給部品の復刻・再販を開始し、スープラやランドクルーザー、ソアラ、セリカなど250品目近いパーツを各販売店やオンラインストアで展開している。この事業はトヨタブランドのロイヤリティ向上に寄与する象徴的な取り組みとなっている。
バリューチェーン収益のもうひとつの柱は、コネクティッド技術である。車両のライフサイクルにおいて、ソフトウェアの定期的なアップデートが前提となり、それに対応するSDVの開発が進展している。今後は、SDVを中心とした先進技術の普及により、ソフトウェア課金が収益の主要な柱となり、拡大が見込まれている。
トヨタは2025年度内に発売予定の新型RAV4に、車載OS「アリーン」プラットフォームを搭載すると発表した。アリーンの主な機能は、
・先進運転支援システム
・ユーザーインタラクション(車両とドライバー・乗員が直感的に操作・コミュニケーションできる仕組み。音声認識やタッチ操作、スマホ連携などを含む)
・インフォテインメントシステム(ナビゲーションや音楽・動画再生、スマホ連携、インターネット接続などを提供し、快適で豊かな車内体験を実現するサービス)
の三つである。OTA(無線通信を通じてソフトウェアの更新や修正を遠隔で行う技術)によるソフトウェアアップデートで、ユーザーの要望に応じた性能や機能の向上が可能となる。
このようにトヨタは、バリューチェーン収益の拡大を着実に進めている。新車販売に代わり、ソフトウェア更新やコネクテッドサービスの継続提供が収益の柱となる。この動きは、自動車が単なる製品から、
「利用されるサービス」
へと変貌する過程を象徴している。EVへのシフトや知能化の進展がもたらした成果であり、ソフトウェア技術の革新が起こした転換点である。