トヨタは「新車依存」を捨てた? 既販1.5億台から収益2兆円の「バリューチェーン戦略」、自動車産業の何が変わるのか

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トヨタは約1億5000万台の既販車ユーザーを軸に、年間1500億円以上の収益を生むバリューチェーン戦略を加速中だ。新車販売依存から脱却し、ソフトウェア・サービス拡充で2兆円超の収益基盤を構築。車両の長期保有や環境対応といった課題も抱えるなか、自動車産業の100年に一度の変革期に挑む姿勢が鮮明となっている。

用品・補給品収益の急伸

トヨタ自動車の2025年3月期決算発表資料より(画像:トヨタ自動車)
トヨタ自動車の2025年3月期決算発表資料より(画像:トヨタ自動車)

 トヨタはこれまで、利益の大半を新車販売に依存してきた。自動車メーカーの本業として当然のこととされてきた。しかし、トヨタは今後、新車販売への依存を減らし、利益構造の転換を目指す方針を示している。

 2025年3月期の決算説明会資料には、2020年3月期以降の営業利益推移が示されている。注目すべきは「新車ほか」と「用品・補給品」の営業利益の比較だ。2026年3月期には、「用品・補給品」や「その他(中古車・コネクテッドサービス)」の利益が「新車ほか」を上回る見込みとなっている。特に「用品・補給品」は右肩上がりで伸びており、トヨタがこの領域に注力していることが明らかだ。

 自動車メーカーの収益構造は、新車への買い替え促進を軸に成り立ってきた。早期に廃車となることが収益の源泉となっている。この戦略はマーケティング用語で

「計画的陳腐化」

と呼ばれる。製品のライフサイクルを短く設定し、買い替え需要を促す製品計画だ。自動車メーカーは定期的なモデルチェンジを繰り返し、継続的に収益を上げてきた。

 しかし現在の自動車市場は成熟期に入り、モデルチェンジによる需要喚起は難しくなっている。日本では人口減少に加え、若年層の自動車所有意欲も低下しているため、需要は頭打ちに近い。さらに、品質向上により製品寿命は延び、計画的陳腐化のサイクルは長期化している。こうした状況から、買い替え需要を主な収益源とするビジネスモデルの持続性は根本から揺らいでいる。

 加えて、CO2削減を目指す環境規制の強化や自動車に対する価値観の変化により、長期保有を前提としたビジネスモデルへの転換を促す環境も整いつつある。

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