「中古車が高くて買えない」 輸出1.5兆円市場の功罪──需給の再設計は可能か?

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2023年の中古車輸出が154万台で過去最高を更新。円安や品質評価を追い風に1.5兆円市場へと成長する一方、国内相場や地政学リスクも複雑化。輸出拡大と需給再編が自動車産業全体の構造改革を加速させている。

円安追い風と信頼の品質競争力

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 輸出業者に追い風が吹いている。2023年の日本からの中古車輸出台数は154万台に達し、前年比20%以上の大幅増で過去最高を更新した。一方で「中古車が高くて買えない」という声も根強い。

・輸出好調が国内市場に与える影響の捉え方
・国内外の需要バランスの最適化

が課題だ。この構造変化は日本の自動車産業全体に新たな成長機会をもたらす可能性がある。

 財務省の貿易統計によると、2023年の輸出先国別でロシアが約20万台で首位、アラブ首長国連邦(UAE)が約19万9000台で続く。この2か国だけで全体の約4分の1を占める。円安も追い風となり、150円台の為替レートが海外バイヤーにとって日本車を割安にした。しかし輸出増加の根底には品質と耐久性への信頼があり、価格だけでは説明できない。制裁下のロシアでも日本車が選ばれ続けているのは技術力と信頼性の証だ。右ハンドル車の技術的優位性も評価され、UAEを経由した多様な輸出ルートによりグローバルな販売網が構築されている。

 国内の中古車オークション市場では価値の見直しが進み、大手USS(愛知県東海市)の平均落札価格は2024年6月に過去最高を記録した。過小評価されていた中古車が品質に見合った価格で取引されている。業界統計でもこの傾向は明確で、日本中古車輸出業協同組合のデータでは月次推移が安定している。輸出需要の高まりは国内市場の価格形成を健全化している側面がある。「安かろう」で海外に流出するのではなく、適正な価値評価により国際市場での競争力を高めている。

 輸出業者にとって現状は事業拡大の絶好機であり、円安効果を戦略的に活用し海外ネットワークの拡大を進めている。日本中古車輸出業協同組合の佐藤博理事長は

「輸出市場が国内自動車流通を下支えしている」

と指摘(『グーネット自動車流通』2024年05月24日付け)。輸出規模は

「1.5兆円市場」

に拡大し、以前の1兆円市場から台数増加と単価上昇で膨らんだ。輸出業者は新興国市場への開拓にも積極的で、参入障壁は低下している。

 政府や関係機関の支援強化とデジタル化の進展が輸出環境整備を後押ししており、JETROの「新輸出大国コンソーシアム」では海外展開の戦略策定から事業計画実行まで一貫支援を提供。

・オンライン査定システム
・AI活用の在庫管理
・輸出手続きの電子化

によって従来の煩雑な業務も効率化されている。これらの動きが輸出参入障壁を大幅に下げているといえる。

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