もはや「バス」とは呼べない? 赤字96%のバス会社が生き残る“巨大な箱”戦略とは?「人を運ぶだけ」ではもはや限界か
バス事業の約96%が赤字に陥る中、単なる輸送手段としての限界が明確化した。だが、「巨大な箱」としての車両空間を活用し、移動型店舗や移動式サウナ、移動レストランなど多様な収益モデルを構築する事例が増加している。新たな顧客体験を創出し、地域社会の課題解決と事業安定化を両立させる発想の転換が急務である。
「巨大な箱」を価値に変える仕掛け

バス業界が苦境に立たされるなか、ユニークかつ多角的な展開で注目されるのが平成エンタープライズ(埼玉県志木市)である。業界関係者の間でも好事例として頻繁に名前が挙がる存在だ。
公式サイトを見ると、同社の事業はバスにとどまらない。ラウンジ、宿泊・飲食、健康・美容、不動産、旅行・観光、農業、地域創生など、多岐にわたる。企業として柔軟な発想と行動力で新たな価値を創造することを使命に掲げている。
例えば農業分野では、自社でいちご農園を運営している。そこでは寿司職人が出張し、朝に豊洲で仕入れたネタをその場でさばき、握り寿司を提供する。会場の隣のビニールハウスでは、いちご狩りも楽しめる。寿司もいちごも食べ放題という体験型ツアーだ。
平成エンタープライズの強みは、こうした独自のストーリーをもつバスツアーを設計し、顧客のウェルビーイングを高めている点にある。ただの移動ではなく、そのバスに乗らなければ体験できない価値」を生み出している。いい換えれば、
「「巨大な箱」に乗る理由」
を自ら創り出しているのだ。バスという空間の存在感を高め、体験価値と結びつけている。こうした発想の転換が、今のバス事業には欠かせない。
さらに、複数の事業領域を組み合わせることで、収益の一部をバス事業に還元し、全体として安定した収益構造を築いている点も見逃せない。同社は2023年、貸切バスの売上高で全国1位となった。
顧客体験を軸に据えたビジネスデザインこそ、これからのバス業界に求められる姿である。