北陸新幹線は「小浜・京都ルート」一択か? 建設費1/3に浮かれる“米原信者”が見落とす「直通性」と国家防災の論理

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北陸新幹線敦賀延伸を経て最大の焦点は未決の大阪延伸ルートに集まる。小浜・京都ルートの経済波及効果と直通利便性に対し、米原・湖西ルートは建設費や速達性で課題が山積。約3300億円と6768億円のコスト差、所要時間の違い、地域の反発と気象リスクが複雑に絡み合い、交通インフラの将来像を揺るがしている。

災害リスクと交通多軸化

北陸新幹線(画像:写真AC)
北陸新幹線(画像:写真AC)

 小浜・京都ルートが評価されるのは、単なる経済効果や地域振興だけが理由ではない。東海道新幹線の代替ルートとして、災害時の交通確保に重要な役割を果たすからだ。

 現在、東京~大阪間の東西交通の大動脈は東海道新幹線という単一の軸に依存している。しかし、この東海道ルートは東南海・南海トラフ地震など大規模災害のリスクを抱えている。特に静岡~名古屋間は海岸沿いの低地や活断層帯を通っており、被災時には日本の経済と物流が寸断される危険性が極めて高い。

 この問題は、1998(平成10)年の「21世紀の国土のグランドデザイン」(全国総合開発計画)でも明示されている。同計画は阪神淡路大震災を踏まえ、日本の災害に対する脆弱性に警鐘を鳴らした。太平洋ベルト地帯への過度な集中に危機感を抱き、こう指摘している。

「活気に乏しい地方での生活、ゆとりのない大都市での生活、劣化した自然、美しさの失われた景観、局所の災害から全国が重大な影響を受けるという脆弱性等の諸問題は、まさしく国土構造上の問題である」

太平洋ベルト地帯や東京圏への集中が進み、自然災害時の影響が全国に波及する状況だ。計画では

「こうした国土の状況が続くのでは、これからの経済社会の発展に明るい展望が開けないことは明らかである」

と警告した。これを踏まえ、多軸化を図るべく紀淡海峡や豊予海峡への架橋など、大規模な交通インフラ整備が提唱されている。

 ただし、この計画は膨大な整備費用が問題となり凍結された。一方で、企業や人、交通インフラが一地域、一軸に集中する危惧は東日本大震災を経てさらに強まった。そのため、米原ルートには依然として疑問が残る。米原ルートや湖西ルートは途中で東海道新幹線と合流する設計だ。平時の移動だけでなく、災害時に東海道新幹線の代替路となる冗長性を考えれば、適切な選択とはいえない。

 東日本大震災から10年以上が過ぎ、災害への危機感は薄れつつある。しかし北陸新幹線建設の目的のひとつが、東海道新幹線不通時の備えである事実は変わらない。重要な機能を
・コストがかかる
・時間がかかる

として控えるならば、建設自体の意味は失われる。

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