なぜ物流業界は“声を上げるドライバー”を排除するのか? 地裁も認定「配車差別」の闇──物流危機の陰で進行する人手不足の“自作自演”

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ドライバー不足が深刻化する物流業界で、「配車差別」が労働者排除の温床に。福岡地裁が不当労働行為と認定した実例も出る中、月13万円の収入減を招く“見えない懲罰”が、制度の盲点と裁量の濫用によって静かにまん延している。

不足なのに「辞めさせる」矛盾

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 職場環境や待遇の改善を求めたドライバーが、配車を減らされ、実質的に現場から締め出される。こうした構造が温存されてきた結果、人手不足を招いている側面は否定できない。人が足りないといいながら、声を上げる人間は排除される。そんな業界に魅力を感じる人は少ない。

 仮に締め付けが厳しくても、賃金水準が高ければ状況は違っただろう。しかし、現実にはそうなっていない。その結果、業界を離れる人が後を絶たない。残されたドライバーには、過剰なシフトや長時間の拘束が重くのしかかる。

 ドライバー不足が深刻化する一方で、人を減らす管理の仕組みが同時に作用している限り、問題は解決しない。

 配車差別は、特定の企業に限った話ではない。背景には、業界全体が

「走って稼げ」
「長時間働いて一人前」

といった旧来型の価値観から脱却できていない実情がある。加えて、行政もこれを是正しようとしていない。

 働き方改革では労働時間の短縮が求められた。しかし、賃金体系は変動給の比率が高く、依然として

「走らなければ生活できない」

構造が続く。この状況下で、配車差別が管理手法として黙認されている。声を上げた者は干されるというメッセージが、業界全体に暗黙のうちに浸透している。

 その結果、若年層の就業忌避や人材の流出に拍車がかかっている。日本の物流インフラは、今や危機的な状況に直面している。業界の労務管理に残る前近代的な体質を解消しない限り、人手不足の抜本的な解決はあり得ない。

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