韓国・中国に敗北? LNG船受注の現実! 「400億円」超えで高騰、なぜ日本は「作れない国」になったのか

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脱炭素を追い風に急拡大するLNG市場で、運搬船の争奪戦が激化している。高度な技術と設備を要するため造船対応は一部企業に限られ、韓国勢が世界の6割を占拠。供給制約が価格高騰に拍車をかけるなか、日本勢は静かに舞台を去った。

400億円船価でも止まらぬLNG投資熱

 日本は世界有数のLNG輸入国であり、その需要を背景に、長年にわたりLNG運搬船の建造にも取り組んできた。三菱造船、川崎重工業、ジャパンマリンユナイテッドなどがLNG船を手がけ、技術力の高さは国際的にも評価されていた。

 しかし近年は、韓国による国家主導の積極的な受注戦略と、造船コストの上昇が大きな転機となった。日本の造船各社は採算確保が難しくなり、LNG運搬船の建造から次々と撤退した。2019年に川崎重工業が最後の大型LNG船を引き渡して以降、日本国内での新造実績はない。

 その後も一部では動きが続いている。三井E&S造船は中国の揚子江船業と合弁事業を立ち上げ、中国側でLNG船を建造している。2023年には、日本郵船と名村造船所が、老朽化したLNG運搬船の主機を高効率エンジンに換装するための基本設計を完了させた。ただし、こうした取り組みがあっても、日本国内の造船所でLNG運搬船が建造された例は、現在に至るまで見られない。

 LNG運搬船に対する需要は今後も継続すると見られている。だが、市場の見通しには変化の兆しもある。新造船の供給が増え続ける一方で、LNGの新規開発プロジェクトは遅れが目立ち、需給バランスの緩みが指摘され始めている。

 それでも多くの海運企業は、LNG船を中長期の戦略投資対象と位置づけている。市場価格も高止まりの傾向が続いており、現時点では建造需要が大きく落ち込む気配はない。

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