韓国・中国に敗北? LNG船受注の現実! 「400億円」超えで高騰、なぜ日本は「作れない国」になったのか

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脱炭素を追い風に急拡大するLNG市場で、運搬船の争奪戦が激化している。高度な技術と設備を要するため造船対応は一部企業に限られ、韓国勢が世界の6割を占拠。供給制約が価格高騰に拍車をかけるなか、日本勢は静かに舞台を去った。

建造費高騰の背景

 LNG運搬船の発注数は、2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発を契機に急増した。世界全体のLNG船発注量はこの年に過去最高を記録し、その大半を韓国勢が獲得している。このタイミングを境に、LNG運搬船の新造価格も大きく上昇した。

 2021年には約2億ドルだった価格は、2024年には2億7000万ドルに達し、日本円で400億円を超える水準となった。これまでにない高値圏である。

 価格高騰の背景には、複数の要因がある。第一に、LNG船の需要が急増している。欧州ではロシア産ガスへの依存からの脱却が進み、パイプラインによる陸上輸送から海上輸送への切り替えが加速した。アジアでも需要が拡大し、新造船の発注が相次いでいる。特に2022年以降、供給能力が逼迫し、造船所の対応が追いつかない状況となった。

 象徴的な動きとして、カタール国営のカタールエナジーは100隻を超えるLNG運搬船の建造プロジェクトを始動。韓国と中国の造船所に次々と発注を行い、世界全体の建造量の約6割を占める規模となっている。業界における存在感は圧倒的だ。

 加えて、造船所のキャパシティにも限界がある。LNG運搬船は高度な冷却・断熱技術が必要であり、対応可能な造船所は世界でもごく一部にとどまる。特に韓国のサムスン重工業、HD現代重工業、ハンファオーシャンの3社が受注の大半を担っている。これに続く中国の大手造船所も注文を伸ばしているが、両国とも新規案件を受け入れる余地は限られている。

 こうした供給制約のなかで、船主側の価格交渉力は低下した。結果として、建造費の上昇圧力がさらに強まっている。

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