京都市バス「優先運賃」のワナ! 割引が“市民”を分断? 年1.2万円vs67万人の排除、そもそも“市民”とは誰なのか
京都市が2024年に記録した3686万の訪日外国人客数は過去最多を更新したが、市営バスの混雑が深刻化し「市民優先価格」制度の導入が検討されている。しかし、住民票を持たない実質的な市民や低いマイナンバーカード普及率が運用の壁となり、経済合理性や公平性の確保に課題が山積している。
「観光都市」の限界構造

結局、「市民優先価格」の導入を難しくしている根本的な原因は、京都市の都市構造そのものにある。
例えば、イタリアのベネチアでは「入島税」という制度が導入され、観光客に明確な負担を求めている。この取り組みは世界的にも注目を集めた。これは、ベネチアが都市全体でテーマパークのような存在になっているからこそ可能な措置だ。
「訪れる人間 = ほぼ観光客」
という単純な構図が成り立つ。だから、入島税という仕組みも成り立つ。
しかし、京都市はまったく異なる。確かに観光資源は豊富だが、京都は観光だけで成り立つ都市ではない。多くの企業、大学、研究機関が集まり、日常生活が営まれている。政令指定都市としての多機能性を持つ都市だ。つまり、観光は都市機能の一部にすぎない。そのなかに、通勤・通学・通院・子育て・買い物といった、さまざまな生活行動が混ざり合っている。
ベネチアでは「訪れる人間 = ほぼ観光客」と判断しやすいが、京都市ではそうはいかない。市民と観光客をどう区別するのか――という問いが必然的に生まれる。この問いには、制度的にも倫理的にも、簡単な答えは存在しない。しかも、「市民優先価格」を導入したとしても、そもそもの問題は解決しない。観光客が多すぎて市民がバスに乗れないという現状が変わるわけではない。
本来、解決すべきは混雑の緩和である。市民に割引、観光客に上乗せという価格調整だけでは、本質的な問題は何も解決されない。