京都市バス「優先運賃」のワナ! 割引が“市民”を分断? 年1.2万円vs67万人の排除、そもそも“市民”とは誰なのか

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京都市が2024年に記録した3686万の訪日外国人客数は過去最多を更新したが、市営バスの混雑が深刻化し「市民優先価格」制度の導入が検討されている。しかし、住民票を持たない実質的な市民や低いマイナンバーカード普及率が運用の壁となり、経済合理性や公平性の確保に課題が山積している。

割引導入が招く税負担の逆転現象

京都(画像:Pexels)
京都(画像:Pexels)

 では、住民票のある市民だけを対象に運賃を割り引くことは可能なのか。これも実現は難しい。

 京都市営バスは、独立採算を原則とする地方公営企業だ。2025年度の予算を見ると、運営費補助として市から7.0億円、府から0.1億円の計7.1億円の補助を受けている。また、車両購入や設備投資などの資本的支出には、市から5.5億円の補助がある。一方で、運送収益は228億円に上る(利用者からの収入)。つまり、現状では税金ではなく「運賃」で運営されている構造になっている。

 ここで市民だけを割引対象にすれば、その減収分は、制度外の利用者からの収益では賄いきれない。最終的には、市の一般財源(税金)によって補填せざるを得なくなる。しかも、この制度を利用しない市民にとっては、他人の割引運賃を自分の税金で肩代わりしているという不公平感も生まれる。

 京都市は、個人の税負担を試算できるサイトを公開している。このサイトを使い、具体的に試算してみた。仮に京都市在住の50歳・独身で、給与収入のみ。年収600万円の場合、次のような税額になる。

・所得金額:436万円
・所得控除合計:43万円
・課税所得:393万円
・市民税:31万5400円(所得割:31万2400円、均等割:3000円)
・府民税:7万9700円(所得割:7万8100円、均等割:1600円)
・森林環境税(国税):1000円
・年間納税額:39万6100円

このような税負担のもとで、仮に市営バスの運賃が1回230円として、「市民優先価格」として1回あたり50円の割引が導入された場合を想定してみる。

 月20回(年間240回)乗ったとしても、割引額は年間1万2000円にとどまる。得をしたというよりも、自分の割引分をあらかじめ税金で支払っていると感じる市民が多くなるだろう。ひとりあたりの負担は小さくても、市営バスの利用者全体で見ると影響は大きい。2023年度のデータによれば、1日あたりの利用者数は33万3000人(定期利用9万3000人、定期外17万5000人)。制度次第では、膨大な減収につながり、市営バスの経営を揺るがす可能性がある。

 逆に、市民以外の利用者に対して料金を引き上げる方式なら、財政的にはプラスになる。例えば、市民以外の運賃を250円とした場合、定期外の17万5000人が1日あたり250円支払えば、総収入は4375万円となる。現行の230円の場合は4025万円なので、差額は1日あたり350万円の増収。年間に換算すれば、約12.8億円の増収となる。

 つまり、松井市長が検討している「市民は据え置き、観光客にはしっかり払ってもらう」という方針は、財政的には理にかなっている。ただし、前述のように制度運用面での課題は多い。

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