ベビーカー、重い荷物…なぜ日本人は手を差し伸べないのか? 「困っている人=自業自得」 一橋大×名大調査で明らかになった共感の欠如とは
「誰にも迷惑をかけない」が美徳とされる日本。その価値観が、移動困難層の孤立、インフラ設計の分断、現場の非効率を招いているのではないか。文化心理学調査と都市交通分析を通じて浮かび上がる、“共感欠如型社会”の経済的損失とは何か。
支援忌避を生む都市設計

日本人はなぜ、困っている人を助けようとしないのか――。
都市の駅構内で、ベビーカーを押す母親が階段前で立ち尽くす光景。郊外のバス停で、重い荷物を抱えた高齢者が誰の手も借りずに乗り込もうとする姿。これらは見慣れた日常風景だ。多くの人はその脇を何もせずに通り過ぎる。そして、その無関心は批判されることなく、むしろ「その人の問題」として処理される。
一橋大学と名古屋大学の研究チームが発表した調査は、こうした光景にある構造を浮き彫りにする。日本人は、米国人に比べて他人への共感的な関心が低く、困っている人に対して
「それは本人の落ち度だ」
とみなす傾向が強い。助けを求めることも苦手で、周囲に迷惑をかけることを避ける文化的な内圧もある。
この研究結果をどう読むか。答えは、単なる国民性や性格論に還元されるべきではない。その背景には、日本という国の移動構造と、経済活動の仕組みに深く根を下ろした
「助け合わない社会」
の設計がある。つまり、個人の態度の問題ではなく、
・都市空間や交通設計
・雇用制度
・消費モデル
といった選択肢のあり方そのものに原因があるのではないか。