ベビーカー、重い荷物…なぜ日本人は手を差し伸べないのか? 「困っている人=自業自得」 一橋大×名大調査で明らかになった共感の欠如とは

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「誰にも迷惑をかけない」が美徳とされる日本。その価値観が、移動困難層の孤立、インフラ設計の分断、現場の非効率を招いているのではないか。文化心理学調査と都市交通分析を通じて浮かび上がる、“共感欠如型社会”の経済的損失とは何か。

設計された自己責任の都市

駅のエレベーター(画像:写真AC)
駅のエレベーター(画像:写真AC)

 そもそも都市とは、他者と交わる場であるはずだ。だが、日本の都市空間は交わりよりも分断を前提に最適化されている。

 例えば、駅構内におけるエレベーターの設置数。日本の鉄道駅は、欧米に比べてバリアフリー対応が大幅に遅れている。ホームと改札を結ぶ唯一のルートが階段というケースは珍しくない。ベビーカーや車椅子の利用者が孤立する構造は、他人の助けを前提としない「個の自立」を要求する。

 また、満員電車という現象も象徴的だ。物理的には隣人と密着していながら、心理的には完全に遮断されたこの空間では、誰かが倒れても気づかない、もしくは気づかないふりをする選択が可能になる。他人に関心を持たずに済む空間構造こそが、日本的無関心の温床だ。いい換えれば、

「誰にも頼らずに自力でやるのが普通」

という前提が、空間レベルで刷り込まれている。そのうえで、困っている人がいたとき、助けない選択は“理的であり、社会的な逸脱ではない。むしろ逆に、助けることで時間を取られ、自分が予定に遅れることのほうが、社会的には逸脱とみなされることすらある。

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