もはや「歩きスマホ」が時代遅れである根本理由
歩行中のスマホ操作は、視界の7割を奪い、歩行速度を最大30%低下させる“社会的コスト高行動”へと変貌している。ウェアラブルや音声技術の進化で、視線を落とさず情報にアクセスできる時代、都市の設計や企業のUX戦略も転換期を迎えている。「歩きスマホ」が時代遅れとなった本質を、経済と行動の視点から読み解く。
都市設計とサービス提供の再構築

都市は、行動の蓄積によって形作られる。歩きスマホという習慣が常態化したことで、すでに街の設計もそれに対応してきた。スマホを見ながらでも歩けるよう、駅構内の段差を減らし、点字ブロックやサインの位置が見直された例もある。
だが、こうした対応には限界がある。すべてのリスクを都市設計側で吸収しようとするには、あまりにも多くのコストがかかる。むしろ、
「歩行中は手元に目を落とさない」
という前提に立って都市を設計し直す方が、公共空間の効率性、安全性、快適性をより合理的に実現できる可能性がある。
同様に、スマホのサービス提供側も移動中の操作を前提にしたUI/UXから、非接触・非視覚的なコミュニケーション設計へと進化する兆しを見せている。企業が投資すべきは画面のなかの体験ではなく、周囲と共存する体験へと移りつつある。