もはや「歩きスマホ」が時代遅れである根本理由

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歩行中のスマホ操作は、視界の7割を奪い、歩行速度を最大30%低下させる“社会的コスト高行動”へと変貌している。ウェアラブルや音声技術の進化で、視線を落とさず情報にアクセスできる時代、都市の設計や企業のUX戦略も転換期を迎えている。「歩きスマホ」が時代遅れとなった本質を、経済と行動の視点から読み解く。

非効率性と目に見えない損失

歩きスマホのイメージ(画像:写真AC)
歩きスマホのイメージ(画像:写真AC)

 電気通信事業者協会の調査によると、9割以上が「歩きスマホ」の危険性を認識しているが、実際には約半数が行っているという。事故は駅構内や歩道で多発しており、視線計測による実験では、スマホ使用中に視界が大きく制限されることが確認された。周囲の状況を把握できなくなり、安全確認が不十分になる。歩行速度は通常時と比べて

「20~30%低下」

し、接触事故や転倒のリスクが著しく高まる。

 問題は、これが本人の到着の遅れにとどまらない点にある。都市部では人流全体の滞留を招き、交差点や駅構内の混雑、さらには公共交通の運行効率の低下につながる。また、注意力が分散されることで、周囲の情報処理能力も低下する。その結果、他者との接触や転倒、信号無視といったリスクが増加する。

 こうした事象が引き起こすのは、単なるトラブルではない。

・事故による医療費の増加
・交通の遅延
・加害者・被害者双方の生産性損失

といった経済的損失も含まれる。歩きスマホは、社会全体にとってコストの高い習慣といえる。

 一見すると効率的に見える行為が、実は時間とコストの両面で非効率を生む。この行動が都市の動線や時間配分に与える影響は、決して小さくない。

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