「ランクル」盗難、異常事態! 全被害の「4台に1台」、もはや“通貨”代わり? 実態調査から読み解く、盗難集中の構造要因とは
盗難車の“通貨”化が進む中、2024年に盗難台数の27.5%を占めたトヨタ・ランドクルーザーが象徴するのは、モビリティが単なる移動手段から高流動性資産へと変貌した現実だ。背景には新興国の需要爆発、部品価値の上昇、そして闇経済による“グローバル裏物流”の構築がある。
密輸部品が動かす裏経済圏
当然ながら、こうした国際的な需給の歪みに目をつけたのが、犯罪組織や非正規ディーラーによる闇経済のプレイヤーたちである。彼らはランドクルーザーを単なる車両としてではなく、部品単位で分解・再統合可能な金融商品として捉えている。
実際、国内で盗難された車両は、迅速に解体され、
・エンジン
・サスペンション
・ECU(電子制御ユニット)
など高価値部品に分けられたうえで海外へ輸送される。完成車としての輸出ではなく部品として持ち出すことで、関税や検問といった法規制をすり抜けやすくなる。さらに、現地で再度組み立てられたり、別車種への移植に利用されたりと、違法ながらも効率的なリユース市場が成立している。
このようにして成立するのが、正式なサプライチェーンとは異なる
「もうひとつのモビリティ流通圏」
である。そこには、トレーサビリティも保証も存在しない。だが皮肉なことに、この闇のサプライチェーンが一部地域におけるモビリティ需要を支えているという構図も否定できない。
ランドクルーザーの盗難多発は、単なる治安の問題ではない。グローバル市場におけるモビリティの流通と価値形成に関する構造的課題なのである。