鴻海、日本の自動車産業を「破壊」する? 国内メーカーとの協業、脱・自前主義! EV産業の変革? 自動車メーカーの存在意義を問う関潤氏の野望とは

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鴻海精密工業は、2025年4月9日に発表したEV戦略で、日本市場に乗用車やバスを2027年までに投入する計画を明らかにした。新たな製造体制では、垂直統合型から水平分業への転換を進め、EV業界の構造変革を目指す。その背景には、ソフトウエア主導の新しいビジネスモデルが見据えられており、業界全体に波及する影響が期待されている。

ソフト主導型産業への転換

鴻海のEVコンセプトモデル(画像:鴻海精密工業)
鴻海のEVコンセプトモデル(画像:鴻海精密工業)

 EVが主流となる自動車社会への移行は、自動車メーカーにとって単なる動力源の変化ではない。

・設計思想
・製造プロセス
・サプライチェーン
・ビジネスモデル

の再構築が求められている。これは、自動車産業そのものの再定義にほかならない。

 これまでの自動車産業は、垂直統合モデルによって発展してきた。主要部品の開発や生産を自社または系列サプライヤーが担い、大規模工場で完成車を組み上げる手法である。高い品質と信頼性を実現する一方で、柔軟性に乏しいというリスクも抱えていた。EVシフトは、こうした

「構造的な脆弱性」

をあぶり出す契機となっている。EVは構造がシンプルで、バッテリーやeアクスルなどのモジュール化が可能だ。その結果、

「誰が、どこで、どうつくるか」

の選択肢が大きく広がる。この変化により、自動車メーカーの製造力が改めて問われる状況になっている。さらにEVは、ソフトウエアによって継続的にアップデートされるプロダクトである。購入後もソフト更新やサービス連携を通じて価値が高まる。この特性は、スマートフォンや家電に近い。したがって、

・UX設計
・クラウド基盤
・データ分析
・サブスクリプションモデル

といった非製造領域の強化が不可欠となる。こうした環境下で、鴻海が日本を含む各地に新工場を展開すれば、自動車産業の集積地に地殻変動が起きる可能性がある。新興国にとっては雇用創出や技術移転の好機となる。一方で、日本の地場産業にとっては空洞化リスクが現実味を帯びてくる。

 今後は、地域に根ざした部品産業をどのようにバリューチェーンへ組み直すかが重要な課題となる。

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