鴻海、日本の自動車産業を「破壊」する? 国内メーカーとの協業、脱・自前主義! EV産業の変革? 自動車メーカーの存在意義を問う関潤氏の野望とは
日本生産で狙うEV再布陣

多くのメディアは2024年3月下旬、鴻海が三菱自動車に対して、EVを相手先ブランド(OEM)で供給する方向で調整中であると報じた。EV戦略説明会では、三菱自動車や日産自動車との提携が発表されるとの憶測もあったが、実際には日本でのEV生産方針が明らかにされる展開となった。
鴻海は、もともと電子機器の受託生産(EMS)を主力とする企業である。2007年ごろにはアップルのiPhoneを手がけるようになり、グローバル企業としての地位を急速に高めた。
2019年には、次なる成長分野としてEV事業への参入を表明。EMSからの脱却を図った。その象徴が、2020年に立ち上げた自社開発のEVプラットフォーム「MIH(Mobility in Harmony)」である。約600社が参画するコンソーシアムを形成し、EVのハードウェア・ソフトウエア・クラウドの共通化を推進。柔軟かつ高いカスタマイズ性を備えた設計を可能にした。
さらに2024年10月には、多目的電動車「モデルD」と中型電気バス「モデルU」の2車種を発表。着実に成果を積み重ねている。
海外でも展開を広げている。台湾の裕隆汽車との協業により、高級車ブランド「Luxgen(ラクスジェン)」の開発に関与。さらに、タイの石油大手、米国の新興EV企業、サウジアラビアの投資ファンドなどとも提携し、EVビジネスのグローバル展開を進めている。
2023年に鴻海の最高戦略責任者(CSO)に就任したのが、元日産副社長の関潤氏だ。関氏は、鴻海のEV戦略において中核的な役割を担っている。関氏が描く将来像は、脱・下請けである。従来の垂直統合型ではなく、水平分業と柔軟なアライアンスを軸としたEVビジネスモデルの構築を目指す。その結果、鴻海は単なる黒子としての存在から、設計を主導するプレイヤーへの転換を図っている。