トヨタ・クラウン変革の成否を問う! 4モデル戦略はブランド再構築か「拡散」か? セダン離れ、多様化路線…10年後のクラウン、その価値とは

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トヨタの「クラウン」4モデル戦略が発表から2年半を経て、ついに全貌が明らかになった。セダンからクロスオーバー、スポーツ、エステートへと多様化を進めた。しかし、その戦略はブランド価値を拡散させたのか。40年以上の歴史を持つクラウンの再構築が成し遂げられたのかを検証する。トヨタの次の一手と、自動車業界の未来を占う重要な分岐点だ。

4モデル戦略の課題、選択の迷宮

クラウンクロスオーバー Gアドバンスド(画像:トヨタ自動車)
クラウンクロスオーバー Gアドバンスド(画像:トヨタ自動車)

 多様化するニーズへの対応やクラウンらしさの再定義を掲げた4モデル構想は、ブランドの再構築をともなう意欲的な戦略だった。しかし、実際の投入には大きな時間差が生じた。クロスオーバーの発売後、スポーツとセダンは2023年秋に順次投入。一方、エステートは約2年半を経て、この春ようやくデビューを果たした。

 この遅れには、2020年以降の世界的な供給網の混乱や市場環境の不安定さなど、複数の外的要因が影響していたと考えられる。ただ、戦略を打ち出すうえで展開のタイミングや順序が与える印象は小さくない。ブランドをどう見せるかもまた、商品戦略の重要な要素だ。

 4モデル戦略そのものは、多様化するニーズに応えたといえる。しかし、異なる4モデルが揃ったことで、ユーザーには「比較して最適なクラウンを選びたい」という新たな期待が生まれた。

 もし各モデルが短期間で出揃い、ユーザーが4モデルすべてを見渡せる状況が整っていれば、選択の納得感はさらに高まっただろう。しかし実際には、エステートが登場する前にクロスオーバーが大幅な改良を受けるなど、

「全体像が見えないまま選択を迫られる状況」

が続いた。多様性を掲げながら、比較の場を十分に提供できなかった点は、ユーザーに戸惑いを与えたはずだ。結果として、選ばせるのではなく、「探らせる」ような構図になってしまった。

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