「CO2運搬船」実用化へ秒読み? 空に返すな、地中に埋めろ! 温暖化対策の切り札となるか? 海運業界、新たな収益源を掴めるか
高コストと港湾整備の壁
CO2運搬船では、液化CO2を専用の貨物タンクに貯蔵して運航する。貨物タンクには、LNG運搬船などでも使用されるType-Cタンクが一般的だ。
Type-Cタンクは円筒形で、他のタンクに比べて設定圧力を高くできるのが特徴だ。しかし、液化CO2はLPGなどと比べて比重が大きいため、貨物タンクにかかる力も大きくなる。タンクの強度には十分な注意が必要だ。また、液体貨物のため、航行中の揺れによる液体の揺れ(スロッシング)も考慮しなければならない。
液化CO2はわずかな温度や圧力の変動で気化する(BOG)。そのため、温度や圧力を常に監視し、BOGを再液化したり、漏れを感知するための計器を設置したりする必要がある。CO2を運搬するためには、専用の液化CO2ターミナルと接続する必要があり、液化CO2の積出ポンプや荷揚げポンプなどの機器が必要となる。港湾施設の整備も進んでおり、欧州や日本ではCO2輸送ネットワークの構築が進行中だ。
CO2運搬船を使ったCO2輸送を普及させるためには、いくつかの課題が残っている。
まず、経済性の問題がある。CO2運搬船の運用コストは高く、事業化にはまだ解決すべき課題が多い。この事業が成立するためには、その有用性が広く認識され、社会に受け入れられることが必要だ。
港湾のインフラ整備も重要だ。CO2は排出された場所で回収され、貯留場所の近くで荷揚げされるため、港湾のインフラとオペレーションの整備が不可欠となる。
さらに、大量輸送技術の確立が求められる。現在、小型のCO2運搬船はすでに運航されているが、大型のCO2運搬船はまだ建造実績がない。大量のCO2を一度に輸送するためには、大型タンクの搭載が必要だ。そのためには、貨物タンクの軽量化や、液化CO2をより低温で圧力を抑える技術的な検討が求められる。
2024年8月には、国際間で大規模な液化CO2の海上輸送を実現するため、川崎汽船、商船三井、日本郵船、三菱造船、今治造船、ジャパン マリンユナイテッド、日本シップヤードが、液化CO2輸送船の標準仕様や標準船型の確立に向けた共同検討を開始することが発表された。また、産業の脱炭素化が進むにつれて、CO2の輸送需要は増加すると予想される。今後、各国の貯留施設へのパイプライン設置や、CO2運搬船の区分けなどで、実現に向けて動き出すことが期待される。