電車で席を譲るのは「優先席より一般席の人が多い」説は本当? 理由は? 考え抜いてたどり着いた“親切のパラドックス”
電車内で席を譲る場面、意外にも優先席に座る人より一般席の方が譲るケースが多いと感じることがある。調査によると、66.9%の人が優先席に座ることがあると答えたが、実際の譲る行動には心理的要因や社会的な圧力が影響している。この現象には、席の配置や文化的背景が大きな役割を果たしていることが見えてきた。
日常の光景から生まれた疑問

電車に乗っていると、高齢者や体調の悪そうな人に席を譲る光景を目にすることがある。しかし、そのとき譲る側がどこに座っていたかを振り返ると、不思議なことに優先席に座っていた人よりも、「一般席に座っていた人」が譲るケースの方が多いのではないか――と感じることがある。
これは単なる印象なのか、それとも何らかの理由があるのか。もし事実だとすれば、どのような社会的・心理的要因が関係しているのか。
この仮説を掘り下げるために、まず優先席の利用実態を確認し、次に席を譲る行動がどのような環境や心理に影響されるのかを考えてみたい。
優先席の利用実態

わかもと製薬(東京都中央区)が2023年9月に実施した調査によると、1949人を対象に「電車に乗った際、優先席に座ることがあるか」と尋ねたところ、66.9%が「座ることがある」と回答している。その理由は次のとおりだ。
・その席を必要とする人がいたら譲るつもり
・席が空いているのに立っていると邪魔になる
・高齢だから
・その席しか空いていないから
・疲れているから
この結果を見ると、優先席に座ること自体への抵抗はそこまで強くないことがわかる。約3人に2人は優先席を利用し、その一部は「必要な人が来たら譲る」という考えを持っているようだ。しかし、実際の車内では
「優先席に座る = 譲るつもりがある」
とは限らないことが多い。例えば、優先席に座る人のなかには、体調が優れなかったり、年齢的に座る権利があると感じていたりする人もいるため、譲る機会自体が少ない可能性がある。