かつては一世風靡も 「大型ジェット機」が引退を余儀なくされているワケ

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ボーイング社は2022年内に、B747の生産を終える。経済効率の悪さや気候変動対策の必要性など、さまざまな理由により引退を余儀なくされている。

最後のエアバス社A380の引き渡し

B747(画像:写真AC)
B747(画像:写真AC)

 エアバス社のドイツ・ハンブルグ工場は2021年12月、超大型ワイドボディー機A380の最後の生産を終えた。ボーイング社も2022年内に、ワイドボディー機B747の生産を終えるという。

 両者は多くの乗客の長距離輸送に適しており、ジェット旅客機の代表として、時代をけん引した機体だった。しかし、経済効率の悪さや気候変動対策の必要性などさまざまな理由で引退を余儀なくされている。今回は、大型ジェット旅客機の終焉(しゅうえん)と行く末についてリポートする。

 2021年12月中旬、エアバス社のハンブルグ工場において、最後のジェット旅客機A380の引き渡しが行われた。当日は、アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ航空のティム・クラーク社長も同席。A380生産拠点として有終の美を飾った。

 超大型ワイドボディー機であるA380は、2007(平成19)年10月の初号機引き渡しから14年間で、累計251機が生産された。このうち半数以上の123機をエミレーツ航空が所有している。最大615人の乗客を乗せることができるA380は、ドバイをハブ空港として全世界を結ぶ同社のビジネスモデルにマッチしていたからだ。

 A380は、エミレーツ航空のおかげで生産数を伸ばしたといっても過言ではない。実際、エミレーツ航空によるA380受注がなければ、もっと早い時期に当機は生産を終えていた。

ボーイング社B747の生産中止と相次ぐ引退

成田へアプローチする大型旅客機A380(画像:写真AC)
成田へアプローチする大型旅客機A380(画像:写真AC)

 2021年7月中旬、ボーイング社のデーブ・カルフーン社長が同社の従業員に向かって、ジェット旅客機B747の2022年内の生産中止を告げた。

 エアバス社A380と同様のワイドボディー機であるB747は、1970(昭和45)年から今日まで改良を積み重ねながら生産され続けた名機である。「ジャンボジェット」の愛称で親しまれ、2007年にA380が登場するまでは、世界最大のジェット旅客機として君臨していた。

 時を同じくして、オーストラリアの航空会社であるカンタス航空は、当初の計画を前倒しして所有するB747計77機の運用を終了した。あるオーストラリアの航空専門家は、

「B747が登場するまでは、ほとんどのオーストラリア人は、船でしか海外に行くことができなかった。多くのオーストラリア人は、B747の引退に特別な思いを抱いている」

と語っている。

 イギリスのブリティッシュ・エアウェイズも、当初2024年に予定していたB747の運用終了を即時実行する旨を、カンタス航空とほぼ同じタイミングで公表した。このほか、KLMオランダ航空も2021年春にB747を引退させている。

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