かつては一世風靡も 「大型ジェット機」が引退を余儀なくされているワケ
時代に淘汰される大型ジェット旅客機

ドイツのルフトハンザ航空は、新型コロナウイルス感染拡大により、B747-400を引退させると思われていた。しかしながら、2021年秋からB747-400を8機と、B747-8を11機、計19機を運用中である。クルーの運用方法とメンテナンス方法を工夫することでコストを低減するとしている。ただそれであっても、同社のB747-400は遅くとも2025年までには引退すると見られている。
A380は、ここしばらく航空各社の運用から外れていた。しかし、2021年秋の急激な航空旅客需要の増加により、ブリティッシュ・エアウェイズは、所有するA380・12機のうち4機の運用を再開した。シンガポール航空も同様に、2021年秋からA380の運航を再開している。
カタール航空も2021年11月、A380の運用を再開した。しかし、同社の場合、旺盛な航空旅客需要を受けてではなく、A350塗装問題により機材が不足したため、仕方なく運航している。実際、カタール航空のアクバル・アル・ベイカー最高経営責任者(CEO)は、A380の購入を最大の過ちと表現している。燃料消費とCO2排出の点において非常に効率が悪いことから、2度と飛ばす気はなかったそうだ。
ボーイング社は
「航空各社はより小型で効率的な航空機を求めている」
と、かねてより航空機の需要の変化を予測していた。加えて、利用客のニーズとして、アジア~ヨーロッパの渡航に際してはハブ空港での乗り換えではなく直行便を望んでいるものと見ている。直行便へのニーズは、エミレーツ航空のビジネスモデルと真逆であり、同社のA380の立ち位置に影響を与えるかもしれない。
この先、航空旅客需要がどのように変化したとしても、残念ながらB747とA380の数が増えることはない。残された機体は、コスト面で敬遠されながらも、時折発生する需要に応えながら、活躍の場をなんとか保っている状態だ。
かつて時代をけん引した大型ジェット旅客機から、より小型でコストパフォーマンスに優れた機体への置き換えが今後、粛々と進んでいくだろう。