なぜインバウンドは「定番スポット」に集中するのか? 今すぐ必要な観光地の分散化、関空より徳島空港が重要? オーバーツーリズム解消に欠かせない移動改革とは

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日本各地でオーバーツーリズムが深刻化するなか、観光地の負担を分散させるためには「どうやって行くか」がカギとなる。移動手段の見直しと新たな観光ルートの開発が、日本の観光業界の未来を左右する。鉄道、バス、タクシーを連携させ、観光と移動を一体化させる取り組みが、持続可能な観光を実現する可能性を秘めている。

都市集中の歪み、分散戦略の必要性

観光地のイメージ(画像:写真AC)
観光地のイメージ(画像:写真AC)

 静寂に包まれた冬の小樽が、オーバーツーリズム(観光公害)の問題に直面している。CNN.co.jpが2025年2月9日に報じた。同市では、インバウンド(訪日外国人)による私有地への不法侵入や交通妨害が相次ぎ、地元当局が警備員を配置する事態にまで発展。さらに2024年1月には、JR朝里駅付近の線路で写真を撮っていた香港人女性が列車にはねられ死亡する事故が発生したという。これを受け、市は対応を強化している。

 この問題は小樽に限った話ではない。山梨県の富士河口湖町や山形県の銀山温泉でも訪日客の急増にともない、ピークシーズンの日帰り客の入場規制が導入されるなど、各地で対応が進んでいる。京都のオーバーツーリズムはいうまでもない。

 こうした状況は、従来の観光施策の課題を浮き彫りにしている。これまで観光業界は「いかにインバウンドを呼び込むか」に焦点を当ててきた。しかし今、求められているのは

「いかにインバウンドの流れを分散させるか」

だ。観光を持続可能なものにするためには、特定の地域に負担を集中させず、地域全体に人の流れを広げる必要がある。そのカギを握るのが「移動の設計」だ。観光地間のアクセス向上や、新たな観光ルートの開発が求められている。

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