「右に見える競馬場、左はビール工場」 ユーミンの「中央フリーウェイ」はなぜ時代を超えて愛されるのか? 歌詞から読み解く1970年代の東京の姿とは
1976年に発表された松任谷由実の「中央フリーウェイ」は、東京西部の都市風景を背景に、ドライブの楽しさと自由を描いた名曲である。歌詞に登場する競馬場やビール工場、米軍基地跡などの場所は、社会の変化とともに新たな意味を持ち続け、今も多くの人々に愛されている。その魅力が時代を超えて支持される理由を探る。
「中央フリーウェイ」不朽の名曲

1976年に発表された松任谷由実(当時は荒井由実)の「中央フリーウェイ」(『14番目の月』収録)は、東京から八王子方面に向かう高速道路を舞台に、ドライブを描いた楽曲だ。リリースからほぼ半世紀が経過しているが、その魅力は今も色あせることがない。
なぜ、この曲は時代を超えて多くの人々に支持され続けているのだろうか。
歌詞に登場する具体的な地名や風景、例えば在日米軍の調布基地(現在の調布飛行場)、サントリー武蔵野ビール工場、東京競馬場を手がかりに、当時の時代背景や都市の変遷を考察することで、その理由を探ってみたい。
都市と郊外の境界を走るという感覚

「中央フリーウェイ」は、単なるラブソングにとどまらない。曲の冒頭からリズミカルなメロディとともに
「右に見える競馬場、左はビール工場」
といった具体的な風景描写が登場する。この情景は、中央自動車道(中央道)の調布ICから八王子方面に向かうルートに沿ったもので、当時から現在に至るまで変わらず存在している。
中央道は1967(昭和42)年に調布ICから八王子IC間が開通し、当時最先端の道路として注目を集めた。都市と郊外を繋ぐこの高速道路を走ることは、単なる移動ではなく、東京の中心から少しずつ日常を離れていく感覚そのものだった。
「都会を抜け出し、どこかへ向かう」
という体験が、この曲の爽快感と自由な雰囲気を支えている。