「右に見える競馬場、左はビール工場」 ユーミンの「中央フリーウェイ」はなぜ時代を超えて愛されるのか? 歌詞から読み解く1970年代の東京の姿とは

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1976年に発表された松任谷由実の「中央フリーウェイ」は、東京西部の都市風景を背景に、ドライブの楽しさと自由を描いた名曲である。歌詞に登場する競馬場やビール工場、米軍基地跡などの場所は、社会の変化とともに新たな意味を持ち続け、今も多くの人々に愛されている。その魅力が時代を超えて支持される理由を探る。

競馬場と工場が映す時代

東京競馬場の空撮(画像:写真AC)
東京競馬場の空撮(画像:写真AC)

「右に見える競馬場、左はビール工場」というフレーズは、単なる地理的な説明ではなく、都市の遊びと郊外の工業が隣り合う、当時の東京西部の姿を象徴している。

 東京競馬場(府中市)は、日本の競馬文化を代表する場所のひとつであり、1970年代には「大人の娯楽」としての側面が強まりつつあった。競馬はかつて賭け事として扱われていたが、この時期、週末には多くの人々が足を運ぶスポットとなった。

 競馬場は「熱狂」と「夢」を象徴する場所でもあり、観客たちは馬の疾走に歓声を上げ、その光景は中央道を走る車の窓からも見えた。こうした情景が、「中央フリーウェイ」の歌詞にさりげなく織り込まれている。

 一方、競馬場の反対側にはサントリー武蔵野ビール工場がある。この工場は1963年に操業を開始し、1970年代にはビール生産の重要拠点となっていた。ビール工場は日本の高度経済成長を象徴する存在であり、労働者たちはここで働き、都市に住む人々はここで作られたビールを楽しんだ。

・都市の「働く場所」としての工場
・都市の「遊ぶ場所」としての競馬場

が、中央道を挟んで並んでいる構図は、まさに当時の東京西部の姿を映し出している。

この対比があるからこそ、「中央フリーウェイ」は単なる風景描写ではなく、都市のエネルギーを感じさせる楽曲となっている。

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