「城しか見るところがない」 なぜ名古屋市はインバウンド誘致の“負け組”になってしまったのか? 宿泊客数、東京のわずか「20分の1」という現実
訪日外国人観光客が急増し、観光公害が各地で問題になっている中で、名古屋市はその波に乗り遅れている。三大都市圏に数えられる大都市でありながら、なぜ名古屋は観光地として注目を集めることができないのだろうか。
街に欠ける「これが名古屋」のインパクト

訪日客は日本の
「その土地ならではの雰囲気」
に非日常を感じている。京都市なら歴史ある名刹や京町家が続く街並み、大阪市なら個性あふれる飲食店が並ぶ道頓堀界隈だ。地方だと合掌造りの集落・白川郷がある岐阜県白川村、江戸時代の武家文化が残る石川県金沢市が人気を高めている。
しかし、名古屋市にはそうした独特の雰囲気を感じさせる場所が少ない。戦災で江戸時代の城下町が残っていた旧市街がほぼ焼け野原となったあと、戦後復興で広い道路と近代的なビルに囲まれた街になったからだ。高度経済成長期には名古屋市がコンクリートばかりの街だとして「白い街」というご当地ソングを石原裕次郎さんが歌った。
名古屋城(中区)、熱田神宮(熱田区)、徳川園(東区)、トヨタ産業技術記念館(西区)、レゴランド名古屋(港区)などそれなりの観光地はある。ひつまぶし、味噌カツなど名古屋めしも好評だ。しかし、「これが名古屋」という街のインパクトは、京都市や大阪市などに比べてはるかに弱く、訪日客の心をつかめていない。
名古屋市自体の知名度も低い。訪日客が殺到する京都市のJR京都駅烏丸口で清水方面行きのバスを待つ訪日客5組に話を聞いたところ、欧米系の4組は名古屋市の存在を知らなかった。インドから来た老夫婦だけが「知っている」と答えたが、名古屋駅を飛騨高山への列車乗り換え場所として利用しただけで、駅の外へ出ていないという。
名古屋市観光推進課は
「海外の観光パンフレットや情報誌に名古屋市の情報掲載をお願いしても、なかなかうまくいかない。東京や大阪、京都は大々的に取り扱っているのに」
と頭を抱えている。