「城しか見るところがない」 なぜ名古屋市はインバウンド誘致の“負け組”になってしまったのか? 宿泊客数、東京のわずか「20分の1」という現実

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訪日外国人観光客が急増し、観光公害が各地で問題になっている中で、名古屋市はその波に乗り遅れている。三大都市圏に数えられる大都市でありながら、なぜ名古屋は観光地として注目を集めることができないのだろうか。

官民挙げて訪日客誘致へ本腰

海外富裕層向けイベントが催された名古屋城(画像:高田泰)
海外富裕層向けイベントが催された名古屋城(画像:高田泰)

 現状打開に向け、官民とも積極的な動きを見せ始めた。名古屋市は2024年末「どえらい名古屋。ストラテジー」と銘打った観光戦略を策定、そのなかで中部圏の玄関口としての機能を向上させ、広域観光の拠点とする方向を打ち出している。

 近隣では、現存する日本最古の天守を持つ犬山城(愛知県犬山市)が2024年、訪日客を中心に過去最多となる60万人以上の入場者を集めた。伊勢神宮(三重県伊勢市)や下呂温泉(岐阜県下呂市)も鉄道で日帰りできる。

 名古屋市内だと名古屋城はそれなりに訪日客を集めているほか、大須商店街(中区)の食べ歩きが訪日客に好評で、名古屋駅を拠点にこれらを結ぶ周遊ルートの整備を視野に入れているわけだ。

 愛知県は「あいち観光戦略2024-2026」に基づき、八丁味噌などを使った名古屋めしの売り込みやインフルエンサー経由で名古屋情報の発信、海外富裕層の誘致に力を入れている。愛知県観光振興課は

「名古屋の訪日客回復は首都圏や関西より遅れているが、地道な取り組みで巻き返したい」

と意欲を見せた。

 富裕層対策では2024年11月、名古屋城で一般公開が終わったあとの夜間に晩さん会付きのツアーや江戸時代の将軍体験ツアーが民間主導で催された。料金は1人25万~180万円と超高額だが、それでも海外富裕層が貸し切りの名古屋城を満喫している。

 名古屋市を単なる通過点から周遊コースの中核に変えるには、市内の観光地に磨きをかけるとともに、見せ方にもっと工夫が必要だろう。名古屋市に満足して帰る訪日客を増やさなければ、知名度も人気も高まらない。

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