ローカル線より深刻 陽の目を浴びぬ「離島航路」存続問題、アフターコロナはどうなるのか
瀬戸内海に面した地域には離島航路が多数存在している。しかし、コロナ禍による利用者の減少でさまざまな問題が浮かび上がっている。
日が当たらない交通弱者問題

近年、交通弱者の問題が広く知られるようになった。交通弱者とは「自動車中心の社会において、年少者、要介護者、一部の高齢者や障害者など、自分で運転することができず、自家用の交通手段がないため公共交通機関に頼らざるを得ない人」(日本大百科全書、小学館)を指す。
交通弱者をめぐる問題は、当事者の住む地域を除けばほとんど顧みられない。鉄道やバス路線の廃止論議は、当事者のいない都市部でも注目されるが、前述のような生活航路に関してはそれを期待できない。
広島県内の離島では、同様の問題がいくつもある。
瀬戸内海の島々から成る江田島市の秋月港では、呉市の呉港を結ぶ旅客線航路が2020年11月から休止している。この航路は元々、2010(平成22)年に廃止が決定しており、それをバンカー・サプライ社が受け継いで運行を継続していた。
秋月港に近い小用港と呉を結ぶ航路は、カーフェリーが運行されており、慢性的な赤字だった。運行を続けられたのは、同社が呉港で遊覧船を運航していたからだった。しかし、コロナ禍による観光客減少の余波はこちらにも及んだ。
呉市では「日本一短い定期航路」と言われた音戸渡船も、2021年10月に定期運行を廃止している。この航路は景勝地である音戸瀬戸への架橋以降も存続していたが、利用者の減少が続いていた。しかしコロナ禍に加え、唯一の船頭のけが、老朽化した船の損傷という不幸な出来事が重なり、廃止前の7月からは運休が続いてた(『中国新聞』2021年11月28日付朝刊)。
コロナ禍は、ギリギリのところで維持されていた生活航路を一気につぶしたと言えるだろう。