出発駅に隠された旅の本当の意味【リレー連載】現代人にとって旅情とはなにか(4)
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旅行の“クライマックス”は出発の瞬間にあり、日常を離れることで得られる解放感は心身に好影響を与えることが最新の研究で明らかに。しかし、過度な“旅行依存症”やエゴイズムには注意が必要だ。キャリーケースを転がしながら歩くその瞬間こそが、現代人の旅情を感じさせる核心なのだ。
非日常に潜むエゴの罠

米国心理学会では、旅行依存症「ドロモマニア(dromomania)」が定義されており、旅行を優先するあまり、生活や精神面に問題が生じることがあるとされている。旅行が人生の主な活動となり、経済活動などの現実的な側面が軽視されてしまうのだ。また、
「旅の恥はかき捨て」
という言葉が示すように、旅行中の解放感や非日常感に影響されて、普段はしないような行動を旅先でしてしまうリスクもある。旅行のエゴイスティックな性質が引き起こす“落とし穴”に陥らないよう、注意することが必要だ。自分にとっては非日常でも、現地の人々にとっては日常であることを忘れてはいけない。
さらに、仲間と旅行する場合、お互いのエゴイズムが高まり、時にはトラブルになることもある。グループ旅行では、各自の希望が衝突する可能性をあらかじめ考慮しておくことが重要だ。
旅行依存症やエゴイズムといったネガティブな面がある一方で、次の旅行のことを常に考え、年に数回の旅行が心の支えとなっている人も多いだろう。
そして、いよいよ訪れる旅立ちの日、キャリーケースを引きながら空港を歩くその瞬間こそが、実は旅の“クライマックス”なのかもしれない。この瞬間、文字通り自分が主役となり、解放感や自己コントロール感を感じ、本来の自分を取り戻すことができ、煩雑な日常を頭の中から追い出すことができるのだ。
キャリーケースを引きながら空港を歩く自分を実感することこそ、現代人にとっての旅情そのものではないだろうか。