「さんふらわあ しれとこ」引退 日本海航路の変遷と老朽化進むフェリーが担った物流革命とは?

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1996年から続いた長い船旅が、商船三井フェリー「さんふらわあ しれとこ」で幕を閉じた。その19年間の航海は、九越フェリーの経営危機や日本海航路の再編を含む波乱万丈の変遷を経て、新たな時代の船旅の形へとつながった。

LNG燃料フェリーで環境負荷軽減

さんふらわあ くれない(画像:写真AC)
さんふらわあ くれない(画像:写真AC)

 元ニューれいんぼう姉妹に話を戻す。この2隻に代わる「さんふらわあ」新造船は、液化天然ガス(LNG)燃料フェリーだ。まず、LNG燃料を使用することにより環境負荷の少ない輸送が提供可能となる。そして全室が窓のないタイプの鍵付き個室となり、フィットネスルーム、キッズルームやリラックススペースなどのパブリックスペースも備えられる。もちろん、バリアフリー仕様である。

 元来、商船三井さんふらわあ(2023年10月1日に商船三井フェリーはフェリーさんふらわあと合併し同社名に)の深夜便は長距離トラックドライバーの居住区画と旅客の区画を完全に区切り、ドライバーがじゅうぶんな休息をとれるよう配慮されていた。新造船がトラックドライバー向けにさらに快適な空間を提供することで、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換する「モーダルシフト」を促進し、さらに「2024年問題」(自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称)の解決を図っていくことが目的となる。

 すでに商船三井さんふらわあの大阪~別府航路には2023年1月以降、「さんふらわあ くれない」「同むらさき」という2隻のLNG燃料フェリーが投入されている。こうした最新鋭フェリーは、将来的に日本のあらゆる航路に広がっていくだろう。

 そして、これから日本のフェリーはますます二分化が進行する。ひとつは、かつての「パンスター・ハニー」とまではいかなくとも、クルーズ客船のようにレジャー色(アミューズメント施設の充実を追求し、イベントも開催)を強めるクルーズフェリー。そしてもう一方は、深夜便のように施設をできるだけシンプルにした合理化フェリーだ。

 元ニューれいんぼう姉妹のような「レトロフェリー」は、淘汰(とうた)される運命にある。しかしこの船はわずかながらもクルーズフェリーの種を残し、一方でひたすら物流を支えてきた。その四半世紀を、忘れるべきではないだろう。

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