「さんふらわあ しれとこ」引退 日本海航路の変遷と老朽化進むフェリーが担った物流革命とは?

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1996年から続いた長い船旅が、商船三井フェリー「さんふらわあ しれとこ」で幕を閉じた。その19年間の航海は、九越フェリーの経営危機や日本海航路の再編を含む波乱万丈の変遷を経て、新たな時代の船旅の形へとつながった。

深夜便、最後の航海

さんふらわあ しれとこ(画像:日本財団)
さんふらわあ しれとこ(画像:日本財団)

 19時過ぎの大洗港(茨城県)はすっかり闇に包まれていた。

 筆者(カナマルトモヨシ、航海作家)を乗せた「さんふらわあ しれとこ」は着岸態勢に入り、間もなく苫小牧港(北海道)からの18時間にわたる船旅が幕を閉じる。同時にこの瞬間、19年前に初めて乗ったこの船との時空を超えた長い航海も終わりを告げた。

 大洗港にはもう1隻の「さんふらわあ」が停泊していた。「さんふらわあ ふらの」。この15分後にあたる19時45分に出港し、翌日の13時30分に苫小牧に入港する商船三井さんふらわあの「夕方便」に就航している。

 一方、「さんふらわあ しれとこ」は深夜1時30分に苫小牧を出港。同日の19時30分に大洗入港というダイヤを採用。それゆえ「深夜便」と称される。

 苫小牧での下船後、札幌などに日中到着できることから北海道への観光客の利用が多い夕方便に対し、深夜便にはそんな乗客は非常に少ない。苫小牧入港は夜の19時45分であり、その日はホテルに入って眠るだけとならざるを得ないためだ。

 深夜便は長距離ドライバーの利用が圧倒的だ。夜間到着し、船から大型トラックを走らせ目的地に急行する。深夜便は物流に特化した運航ダイヤを組んでおり、船内も夕方便のようなレジャー色はなく、ドライバーがゆっくり休息をとることを主眼にしたシンプルな施設で占められている。

 深夜便に2007(平成19)年から就航する「さんふらわあ しれとこ」と「同だいせつ」の姉妹船。それは夕方便の「さんふらわあ ふらの」「同さっぽろ」のように、同社が手がけた船ではない。もともと他社船であり、船齢も20年を超えたいわゆる老朽船。それゆえ、来年(2025年)にはこの航路から引退することも決まっている。筆者はお別れをするため、「さんふらわあ しれとこ」に乗ったのだった。

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