“夜行寝台バス”は本当に成功するのか? 国交省「座席フルフラット化」が直面する3つの深刻課題とは
夜行バス革命が始まる? 国土交通省が解禁した「フルフラット座席」。海外で主流の快適仕様が日本に進出し、長時間移動が劇的に変わる可能性を秘める。安全性やコスト課題を克服し、新たな快適性を手にする未来は、鉄道や航空に迫る高速バスの進化の第一歩だ。
差別化のチャンス、快適バスの未来

ドリームスリーパーは非常に人気が高く、筆者(西山敏樹、都市工学者)が調査したところ、東京~奈良間の便は週末になるとしばしば満席になる。個室でできるだけ横になれる角度が、多くの利用者に好まれているからだ。
では、「なぜ完全フラットな寝台式ではないのか」という点についてだが、寝台式にすると、急ブレーキや事故時に
「乗客がベッドから投げ出される危険性」
があるためだ。このため、警察庁も寝台式を乗車装置として認めてこなかった。
フルフラット座席の導入は、利用者にとって大きなメリットをもたらすだろう。疲労を十分にとるためには、やはり完全フラットな座席が最適だという意見が多い。
夜行高速バスを利用する人たちの多くは長時間の移動を強いられるため、快適性の向上が重要視されている。特に、寝心地のよいフルフラット座席は、睡眠の質を向上させ、長距離移動のストレスを軽減するため、多くの乗客が求めている。
さらに、バス事業者にとっても、鉄道や航空と競合する市場で
「差別化を図るチャンス」
となる。快適性をアピールすることで、乗客数の増加や新たな利用層の獲得が期待できるようになる。また、車両メーカーにとっても、新しい座席設計や技術開発が求められ、関係産業全体の活性化につながる可能性がある。