大型船と「世界最大魚類」がなんと衝突危機? そのリスクが年々高まっていた! いったいなぜか

キーワード :
,
地球温暖化が魚に深刻な影響を与え、ジンベエザメが船と衝突する危険が増えている。違法漁業も世界的に拡大しており、漁船の約75%が追跡されていない。海洋資源を守るためには、追跡システムの義務化が急がれている。

生息地が50%消失危機

サウサンプトン大学のウェブサイト(画像:サウサンプトン大学)
サウサンプトン大学のウェブサイト(画像:サウサンプトン大学)

 英サウサンプトン大学と海洋生物学協会(MBA)の研究者は、地球観測衛星によるジンベエザメの追跡データと気候モデルを組み合わせて、三つの異なる将来の気候シナリオに基づくジンベエザメの分布を予測した研究を、2024年10月に「Nature Climate Change」で発表した。

 今のまま化石燃料に大きく依存するモデルを続ければ、2100年までにいくつかの国の海域でジンベエザメの主要な生息地が50%以上失われると予測されている。特にアジアの海域でその損失が最も大きいとされている。

 一方で、地球温暖化を2度以下に抑える持続可能な開発シナリオでは、欧州の海域で中核生息地が増加する地域も見られた。

 研究チームは、ジンベエザメの生息地分布と船舶交通密度を組み合わせて分析した結果、新たに適応した生息地の一部が交通量の多い船舶航路と重なっていることを突き止めた。これは、北太平洋の米国領海、東シナ海の日本領海、北大西洋のシエラレオネ領海など、世界各地で起きることが予測されている。

 さらに、研究チームは、2050年までに船舶とジンベエザメが同じ海域で“同居”する確率が最大1200%増加すると予測している。たとえ海上交通の船舶輸送が現在の水準にとどまったとしても、すべての気候シナリオで船とサメの“同居”が増加するということだ。

 ジンベエザメは2000年に国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧種として登録され、保護対象となっている。その個体数減少の主な原因は、

・フカヒレや魚油を目的とした違法な乱獲
・船との衝突や漁網への絡まり
・海洋汚染
・海水温の上昇

による餌の減少などである。今では、絶滅危惧種保護の議論に気候変動の影響を考慮に入れる必要があるとされている。

全てのコメントを見る