民営化の公約「ローカル線もなくなりません」は結局、守られたのか?【短期連載】国鉄解体 自民党「1986年意見広告」を問う(6)

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ローカル線の存続は地域経済にとって非常に重要だ。2020年代のJRグループは、赤字路線の見直しを迫られている。特にJR北海道をはじめとする三島会社は厳しい状況にあり、地域住民との協力が求められている。赤字路線を廃止すると地域のアイデンティティが脅かされるため、持続可能な鉄道を支える新たな枠組みを早急に構築する必要がある。

JR改革の難題

窪川駅に停車中の予土線ホビートレイン。2014年8月18日、筆者撮影(画像:大塚良治)
窪川駅に停車中の予土線ホビートレイン。2014年8月18日、筆者撮影(画像:大塚良治)

 ここで、本稿の結論を述べる。特定地方交通線以外の路線廃止が進んでいるため、政府・与党の公約は守られていないと判断する。一方で、国鉄分割民営化から37年以上が経過し、社会環境が大きく変わったことを考慮すると、

「JRを批判するだけでは問題は解決しない」

ことは明らかだ。完全民営化後の民間企業の経営に国が干渉することは難しいということは、初めからわかっていたのではないだろうか。JR各社の完全民営化が目標とされた時点で、多くの公約が守られなくなることは既定路線だったといわざるを得ない。

 JR会社法附則第2条(平成13年6月22日法律第61号)には「新会社(本州3社-筆者注)がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」(国土交通大臣指針)を定めて公表する旨の規定がある。この指針では「新会社は、鉄道事業法(中略)第28条の2の規定により現に営業している路線の全部又は一部を廃止しようとするときは、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を関係地方公共団体及び利害関係人に対して十分に説明するものとする」と定めている。しかし、この大臣指針は「歯止め」にはならず、特定地方交通線以外の路線廃止は続いている。

 さらに、六つの公約に整備新幹線の並行在来線の取り扱いが明記されていなかった点も問題だ。1984年12月26日に自民党の5役会議は、国鉄分割民営化にともない発足する新会社を配慮し、整備新幹線開業時に並行在来線を廃止することを決定していた(角一典「並行在来線経営分離問題をめぐる政治過程-北陸新幹線建設における信越本線経営分離を事例として-」『関東社会学会大会報告』2001年6月9日)。

 こうした事実を考慮すると、並行在来線の扱いについても公約に明記すべき重要な事項だったはずだ。経営分離の対象となる並行在来線は、距離が100kmを超えることもあり、沿線地域に与える影響は大きい。したがって、六つの公約のなかに

「ローカル線(特定地方交通線・新幹線の並行在来線以外)もなくなりません。」

といった内容を盛り込むのが妥当だったと思う。歴史に「もし」はないが、もし並行在来線の廃止が公約に記載されていれば、国鉄分割民営化への反対意見が高まり、民営化の手続きにも影響を及ぼしていた可能性があったと考えてもいいだろう。

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