米国での人気急上昇と高騰するチケット価格【連載】開かれたF1社会とその敵(4)
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F1は「ムラ」としての閉鎖性を克服し、予算上限を導入したことで競争が激化している。2024年のバーレーンGPでは、約1秒の接戦が実現した。また、カーボン・ゼロ目標に向けてパワーユニットの電動化が進んでいる。一方で、米国での人気が急上昇しており、チケット価格も高騰している。F1が一般層に開かれたイベントであり続けるためには、価格と価値のバランスが重要だ。
予算上限で変わるF1の勢力図
本連載「開かれたF1社会とその敵」では、F1の歴史と閉鎖的な構造に焦点を当て、変化の可能性を探る。F1の成長とともに形成された独自の「F1ムラ」における利益と利他の対立、新規チームの参入の難しさ、そしてオープンな社会への道筋を検証する。F1の未来と進化に向けた具体的な可能性を示し、閉鎖的な構造からの脱却戦略を提案する。
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F1のことを「F1サーカス」と呼ぶことが多いが、本連載では、実際に閉鎖的な面があるため「F1ムラ」と表現している。ファンに見放された場合、たとえモータースポーツの最高峰であっても存続できるかは不明だ。
一方で、F1はプロスポーツとしてファンに支えられており、ファンの支持を得るために、より開かれた存在に変革しようと努力してきた。では、これまでにどんな取り組みがあり、どのような影響をもたらしたのか。
F1も一般企業と同じで、持続可能なビジネスモデルを構築しなければ未来はない。そのことはF1関係者も理解しており、自ら変わる努力をしてきた。近年の大きな変革のひとつとして、
「予算上限の導入」
が挙げられる。F1は世界最先端の技術を駆使し、大量の資金が必要な競技だ。無制限にすればチーム間の格差が広がり、一部のチームは存続が難しくなる可能性があった。
その結果、2024年のF1開幕戦バーレーンGPでは、予選Q1でトップから最下位までのタイム差が約1秒という接戦が実現し、少しのミスで順位が2、3番下がるほどマシン性能の差が縮まった。功罪の「功」が罪を上回った。
パワーユニット(PU)のレギュレーション変更も同様で、F1はその時代に応じた安全性や要請に基づいて、エンジンやPUのルールを頻繁に見直してきた。