米国での人気急上昇と高騰するチケット価格【連載】開かれたF1社会とその敵(4)
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F1は「ムラ」としての閉鎖性を克服し、予算上限を導入したことで競争が激化している。2024年のバーレーンGPでは、約1秒の接戦が実現した。また、カーボン・ゼロ目標に向けてパワーユニットの電動化が進んでいる。一方で、米国での人気が急上昇しており、チケット価格も高騰している。F1が一般層に開かれたイベントであり続けるためには、価格と価値のバランスが重要だ。
新規制で加速する電動化

現代では、温暖化対策として二酸化炭素の排出削減が求められている。
国際自動車連盟(FIA)は2019年に、2030年までにカーボン・ゼロを目指す方針を発表した。この目標に基づき、2026年からのPUでは、電動化の割合が約2割から5割に引き上げられる予定だ。また、内燃機関(ICE)への燃料供給量は2020年の100キロから、60~70キロに制限される見通しだ。
ガソリンの消費量が減るという事実は大きな意味を持つ。世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)の販売戦略を見直しているとはいえ、依然としてガソリンを燃やして二酸化炭素を排出する内燃機関(ICE)中心のレギュレーションでは、モータースポーツの最高峰としてサステナビリティへの取り組みが不十分だと批判されかねない。これは時代が求めた新しいレギュレーションだ。
かつて、
「走る実験室」
と呼ばれ、モータースポーツで培った技術が量産車に反映されてきた。しかし、F1が速さを追求するあまり、量産車に応用できる技術が少なくなり、その存在意義が薄れつつあった。しかし新たな規定は、量産車に必要な技術に焦点を当てているため、F1が「走る実験室」としての役割を取り戻し、自動車メーカーからの関心も高まっている。これにより、ICEとバッテリー技術の進化が加速し、量産車にフィードバックされるという好循環が生まれる。
ただし、100%電動化についてはフォーミュラEという別のカテゴリーがあるため、F1からICEが完全になくなることはない。そのため、ハイブリッド技術がさらに進化する可能性が高い。