米国での人気急上昇と高騰するチケット価格【連載】開かれたF1社会とその敵(4)
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F1は「ムラ」としての閉鎖性を克服し、予算上限を導入したことで競争が激化している。2024年のバーレーンGPでは、約1秒の接戦が実現した。また、カーボン・ゼロ目標に向けてパワーユニットの電動化が進んでいる。一方で、米国での人気が急上昇しており、チケット価格も高騰している。F1が一般層に開かれたイベントであり続けるためには、価格と価値のバランスが重要だ。
富裕層ターゲットのF1戦略
ファンの拡大を目指すF1だが、気になるのはチケット価格の上昇だ。
2024年の3日間のチケットの平均価格は、日本で約5万1000円、ラスベガスでは
「25万1000円」
に達している。2025年の日本GPのチケットは10月13日に販売されるが、V1席は前年の8万円から9万円に、V2席の一部は10万円から12万円に値上がりしている。また、一番安い西エリアのチケットも1万2000円から1万6000円と、3割以上の値上げが行われた。
F1のビジネスモデルは最近、特に
「富裕層」
をターゲットにしたものにシフトしている。フェラーリやエルメスなどの富裕層ビジネスは、景気の動向に影響されにくく、利益率も高い。そのため、全体的な方向性としては間違っていないかもしれない。
しかし、ドキュメンタリーや映画を通じて一般層を広げようとしている事実もある。現時点では、一般の人々がチケットが高いと思ってもF1観戦に足を運んでいるが、今後さらにチケットが高いと判断されると、運営側の価格設定との乖離(かいり)が生まれ、サーキットに空席が目立つようになる可能性がある。
今後、F1が多くの人々に開かれたイベントであり続けるためには、その価格と価値のバランスをどう保つかが課題となるだろう。