ガソリンスタンド存続の鍵! 「地下タンク」問題を解決する4つの方法をご存じか
四つの解決策

今回、筆者が提案する解決策は次の四つだ。
・行政の支援策
・革新技術の導入と業界の協力による普及
・地域との連携
・技術的事例としてのスマートタンク
これらについてひとつずつ説明していこう。
●行政の支援策
政府は何も手をこまねいているわけではない。2011(平成23)年以降、次のような補助を発表した。
・内面ライニング:700~900万円
・電気防食:500~800万円
・常時監視装置の設置:200~300万円
地下貯蔵タンクの入れ替えに対する補助金は、一般的なスタンドの場合、工事費のうち2000万円を上限に補助対象となり、その2/3が補助の上限とされた。ただし、補助金には限度があり、経済状況などにより補助件数が減る可能性もある。エコカーの普及も進んでいる一方で、将来への不安から廃業を決定するケースも見られる。しかし、ガソリンを必要とする車は依然として存在するため、資金補助の継続については、モビリティの確保、つまり「移動の権利」や「物流の確保」に関する法律的な議論を基に進める必要がある。
●革新技術の導入と業界の協力による普及
筆者は、老朽化に伴う常時監視装置の設置が比較的安価であることに期待している。これらの監視装置には人工知能(AI)を導入できるからだ。老朽化に関するデータを集めることで、AIの監視精度も向上する。スタンド業界でDXテクノロジーを共有し、監視技術やトレーニングプログラムを構築することも重要だ。これにより、データの読み取りや老朽化に向けた修繕プロセスに役立てることができる。
実際、スマートタンクシステムの技術研究は進行中だ。老朽化に関するビッグデータに基づき、AIが老朽化の兆しを使用者に知らせる仕組みが検討されている。今後は人口が減少し、スタンドも人手不足になることが予想されるため、業界はDX化を目指す必要がある。
●地域との連携
ガソリンスタンドの収益を増やし、持続可能にすることも重要だ。地域住民との協力によってサービスを多様化し、EV充電ステーションの設置など新しいサービスを提供することが求められる。また、地元のガソリンスタンドを利用すると割引があるといったインセンティブも必要だ。地域でガソリンスタンドを育てる視点も大切だと感じる。こちらについては、前の記事「毎年500か所が消滅! 全然止まらぬ「ガソリンスタンド」衰退の末路とは」(2024年9月9日配信)を参考にしてほしい。
●技術的事例としてのスマートタンク
現在、容量990Lのスマートタンクが徐々に社会に導入されている。ソーラーエネルギーと一般的な自家用車の内蔵バッテリーを利用するため、電源がなくても給油が可能だ。また、非常災害時にも強い設計になっている。消防法にも適合しており、設置が簡単で、ソーラー充電によるエコなシステムを採用している。さらに、IoTを使って常時在庫管理ができ、定期的な補充も可能だ。重厚長大な貯蔵タンクを不要にし、地上に設置できる軽薄短小な技術として、地方部の小規模なスタンドにとって有用である。今後、スタンドの重厚長大から軽薄短小への移行が重要なテーマになるだろう。