いつまで荷主にナメられるのか――もはや爆発寸前、中小「運送会社」の“積年の恨み”の正体

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これまで運送会社の多くが、荷主に虐げられ、辛酸をなめさせられてきた。なぜ、運送会社はここまで立場が弱くなってしまったのか?運送会社が荷主に対して抱いてきた、積年の恨みの正体を解き明かす。

「一度取引を切られた荷主とは、二度と付き合わない」

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 10年以上前の話なのだが、1000台以上のトラックを保有する大手運送会社社長から、こんな話を聞いたことがある。

「ウチはね、一度取引を切られた荷主とは、どんなことがあっても二度と付き合うことはない」

筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は驚いた。その語気の強さもさることながら、運送会社は、荷主よりも圧倒的に

「立場が弱いもの」

という認識があったからだ。「なぜですか」と問う筆者に対する、社長の答えはこうだ。

「足元を見られてしまうからだよ。もし取引を再開しようものならば、今まで以上の過剰要求をしてくるんだ。ウチだって、そういった荷主に散々苦しめられたんだ……」

社長のいう、過剰要求の内容はさまざまだ。

・手積み手卸し
・配送先の店舗における商品の棚入れ
・積み卸し先でのフォークリフトを使ったドライバーによる自主荷役

積み卸し先の都合で、何時間も待たされることも多々ある。しかもこれらはすべて無償である。

「荷主は、自分のわがままが運送会社を苦しめていることに気がついてすらいない。その上、さらに運賃値下げを要求してくる。恥知らずもいいところだよ」

と社長は憤ったうえで、

「世の中の運送会社が、皆、私と同じ考え方をして同じように行動してくれたら、運送業界はもっとよくなるのに……」とつぶやいた。

「あなたのところは大手だから、そのように強気に出られるんですよ」

筆者はそう思ったが、もちろん口には出さない。筆者は当時、従業員30人ほどの中小運送会社にいた。口に出せば自分がみじめになるだけだし、そもそもそれはこの社長だってわかっているはずだからだ。

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