熊本市電「顔認証システム」導入見送り! 利用者の利便性を考えたら、結局「ICカード頼み」なのか?
顔認証の導入が進むなか、熊本市電はコストや処理時間の問題から導入を見送った。全国共通のICカードの安定性や信頼性が見直され、効率的な統一が最適解と考えられている。
新技術導入の壁、顔認証の現実

しかし、現実はこうしたバラ色の未来予測とはほど遠い。
実際、顔認証やQRコード決済が改札入場の新たな手段として本当に普及するかどうかは未知数だ。その理由ははっきりしている。今回の取材でも確認したが、ICカードに代わるシステムの優位性を明確に示す学術論文や信頼できるデータがないのだ。
この記事を書くにあたって、交通行政のある専門家に連絡を取ったところ、こんな答えが返ってきた。
「私の知る限り、そのような学術論文は見たことがありません。現在、IT分野では開発が進んでいますが、逆にいえば。まだその段階で止まっているわけです。いろいろと利便性が向上するという話もありますが、その効果や問題点を十分に検証している段階ではありません」
鉄道会社が新技術の導入を急ぐ理由のひとつに、
「人材不足への対応」
がある。顔認証やQRコード決済システムの導入により、改札業務の自動化が進み、限られた人的資源をより付加価値の高い業務に振り向けることが期待されているのだ。
しかし、顔認証などの新技術の導入には
・導入/運用コストが不透明で、既存システムより高額になる可能性がある
・システムの安定性や認識精度が十分に検証されていない
・プライバシーや個人情報保護への懸念がある
・高齢者や技術に不慣れな利用者への対応に課題がある
・異なる交通機関間の相互利用性を確保するための実現が複雑である
・急速な技術進歩により、導入したシステムが早期に陳腐化するリスクがある
・既存のICカードシステムとの並行運用による混乱と追加コストの可能性がある
・システム障害時の代替手段を確保する必要がある
といった問題点があるのを忘れてはならない。