関釜フェリーの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない【リレー連載】偏愛の小部屋(10)

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1970年、日韓の海の架け橋として誕生した関釜フェリーは、半世紀以上にわたって日韓の交流を支えてきた重要な航路だ。下関と釜山を1日1往復し、約13時間の航海を経て、実際の所要時間は約8時間である。

関釜フェリー乗船の必然性

コロナ前のもっとも混雑していた時期。日本語はまったく聞こえない(画像:昼間たかし)
コロナ前のもっとも混雑していた時期。日本語はまったく聞こえない(画像:昼間たかし)

 ここまで関釜フェリーについて存分に語ってきたが、皆さんにも絶対に乗ってほしい。その理由を、偏愛者の視点から説明しよう。

 まず挙げられるのは、驚異的なコストパフォーマンスだ。何度も書くが、安さは魅力的だ。現在、ネット割引で最低片道6300円という破格の価格で国際移動ができる。確かに、東京から下関までの運賃も青春18きっぷとの組み合わせでさらなる節約も可能だ。そこまでしなくとも、東京~福岡の航空運賃は安いので、思わぬ格安旅行が実現する。

 次に注目すべきは、効率的な時間活用だ。寝ている間に国際移動ができる、まさに

「どこでもドア」

的体験。早朝の飛行機のための早起きは不要で、夜にふらっとターミナルに行って乗船すれば、目覚めた時にはもう韓国だ。到着後すぐに観光や仕事を開始できるのも大きな利点だ。

 さらに、旅の多様性を広げてくれるのも関釜フェリーの魅力だ。地元民以外なら、行きも帰りも九州を満喫できる。福岡や北九州の観光を前後に挟むのが定番だが、さらに冒険心をくすぐるのは、別の航路との組み合わせだ。筆者の経験では、博多港から対馬(厳原)に船で行き、対馬観光後に比田勝から高速船で韓国へ、帰路は関釜フェリーという旅程もある。これぞ、まさに「やばい!」旅のアレンジといえるだろう。

 そして、忘れてはならないのが、ノスタルジックな体験だ。2等雑魚寝ならではの思わぬ交流は、特筆すべき魅力のひとつだ。だいたい同室になった日本人か韓国人が何かしら話しかけてくる。歳を重ねるとバックパッカー的な旅は面倒になるが、ここではひと晩だけその雰囲気を味わえる。筆者が出会った70歳を過ぎた日本人男性は

「たまに、釜山に行ってうまいものを食べてリフレッシュしている。宿はいつもサウナ」

と、旅慣れしまくっていた。こんな味のある人に会えるのも、関釜フェリーならではの特別な体験だ。この瞬間、あなたは気づくだろう。そう、わざわざこんな航路を旅行し、

・インスタ映え社会
・消費社会

への反逆を楽しんでいる自分自身が、実は一番「やばい!」のだ。普段のSNS中毒から解放され、純粋に目の前の食事を楽しむ。その素朴な喜びに、心の奥底から震えるはずだ。

 関釜フェリーは、単なる移動手段ではない。それは、現代社会の騒がしさから逃れ、本当の自分を取り戻す旅なのだ。下関の寂れた雰囲気、船内の素朴な設備、そして

「釜山の大衆食堂」

。これらすべてが、私たちの日常に埋もれていた感性を呼び覚ます。確かに、

「そんなの時間の無駄」
「雑魚寝なんてやだ」
「暇な大学生かよ」

という声も聞こえてくるだろう。しかし、断言しよう。このフェリーは、すごくやばくてハマるんだ! 一度体験すれば、その独特の魅力にきっと取り付かれるはずである。

 関釜フェリーの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない。皆さんが感じる“やばさ”があったらぜひ聞かせてほしい。

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