関釜フェリーの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない【リレー連載】偏愛の小部屋(10)
やばいポイント2「船内での単調な時間」

出国手続きを済ませ、ゲートをくぐると、そこには駅の売店レベルの小規模な免税店があるだけだ。もともと、ここで買い物する人をあまり想定していないのか、大抵の免税店では売れ筋商品であるたばこの品ぞろえすら乏しい。
そして、乗船。船室はカーペット敷きの部屋に10人ほどが雑魚寝するスタイルだ。全員に同じ
・薄い布団
・ビニール製の硬い枕
・薄いブランケット
が支給される。電源は壁に数個あるだけで、早い者勝ちだ。電源タップを持参すれば、
「同室者から感謝される」
こと間違いなしだ。設備は乏しい2等船室だが料金は安い。正規料金の9000円という価格設定。これが、前日までの予約なら
「30%引き」
になる。1970(昭和45)年の就航時は5400円だったというから、半世紀以上たってもあまり値上がりしていないのだ。ちなみに当時のラーメンは200円程度だ 。隣国とはいえ、海外まで諸税込みで片道1万円以下。この価格設定こそ、どう見ても「やばい!」。
船内設備は、豪華客船とは程遠い。風呂と食堂はあるものの、それ以外の娯楽施設はほぼ皆無。かつてはステージ付きホールがあったそうだが、その船室は、今では単なる食事スペースと化している。唯一の娯楽らしい娯楽といえば、カラオケくらい。それも、大抵韓国人の中年女性の団体に占拠されているという。
食事に関しては、船が日本側の「はまゆう」か韓国側の「ソンヒ」かで若干の違いがある。どちらも和食と韓国料理の定食を提供しているが、多くの乗客は持ち込みの弁当やカップ麺を食べている。
売店も船によって異なるが、ソンヒでは韓国のコンビニ「GS25」が出店。ここでは韓国の雰囲気を存分に味わえる。だが、やはり陸上の店舗ほど品ぞろえがよいわけでもなく、やっぱり寂しさが募る。本来のGS25はテイクアウトのフードがやたら充実している、日本ではミニストップ的な雰囲気だ。
そして、22時になると強制的に消灯。いや応なしに就寝時間の到来だ。2等船室は、ずっとエンジン音が響いているし、枕は硬いしでなかなか寝付けない。だから「釜山港へ帰れ」の曲が、またしても妙にしっくりくる。