世界のEV市場をけん引、多様な事業展開の全貌【短期連載】進撃のBYD(5)

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公共交通の電動化で深センでの成功を収め、世界的にも影響を拡大。BYDは持続可能なエネルギーエコシステムの構築を進め、EVシフトを加速させる存在として注目されている。

今や脱炭素時代の「総合企業」

BYDの発売した自動車(画像:BYDジャパン)
BYDの発売した自動車(画像:BYDジャパン)

 中国の電池メーカーが驚異的な成長を遂げ、世界最大の電気自動車(EV)メーカーとなった比亜迪(BYD)。その飛躍的な躍進は世界に衝撃を与えた。同社の創業者・王伝福氏は卓越した洞察力とユニークな経営手腕を発揮し、この成長を導いた。同社は、電池事業で培った「人とテクノロジーの融合」の生産方式を武器に自動車業界に参入。2005年に発売した「F3」は瞬く間に中国市場を席巻。各国の政府の後押しもあり、急成長を遂げた。本連載では、BYDの急成長の要因を分析し、その実力を明らかにしていく。

※ ※ ※

 BYDは電池メーカーであり、自動車メーカーである。しかし、実際の事業はさらに広範囲に及んでいる。

・太陽光発電
・蓄電システム
・モノレール

も製造している。商用車も電気バスだけでなくフォークリフトもだ。BYDの実態は、

「脱炭素時代の総合企業」

というべきものだ。いうまでもなく、世界は脱炭素社会に向けEVシフトを加速させている。BYDはEVシフトに全力で取り組んでおり、EVの普及とそれにともなうインフラやサービスの変革を前提に事業を展開している。

 同社の見極めは極めて早かった。EVの信頼性が現在よりもずと低かった2011年に、BYDは深センで

・電気バス:200台
・タクシー用EV:200台

を提供している。同社の戦略は、自家用車よりも利用される時間が長い公共交通で使われている車両をEVへ転換することで、

「EV時代の到来」

を広く知らしめることだった。これが功を奏したのか、2017年には深センのバス1万6359台すべてを電気バスに転換を達成。2019年には2万2000台のタクシーすべてもEV化された。

 この事例は海外での事業にも生かされている。例えば、シンガポールでは、バス・タクシーの電動化が推進されているが、その運行に欠かせない充電インフラの整備にもBYDは関与している。さらにBYDの提案でゴミ収集車などの公共事業に関わる車両のEV化も進んでいる。

 インドもBYDの有力な市場だ。都市部では大気汚染の対策として、BYDの電気バスの受注が相次いでいる(2021年時点で同国シェアの43%)。さらに、ヒマラヤの高地でも環境保護のために電気バスが期待されている。

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